あれは…
そう。
忘れもしないイタリアへ向かう飛行機の中。
私と彼の出逢いはそこから始まった。
ミラノでのヘアメイクの仕事があり用意されたファーストクラスへ。
離陸してしばらくした時にふと視界に入ってきた人影…。
キャップを目深に被ってサングラスにマスク…
完全防備している人がウロウロしていた。
私は座席をフラットにして自分だけの空間にくつろいでいた。
…もしかして、何か困っているのかも…?
慌てて靴を履きその男性に声を掛けた。
どうやら片方だけイヤホンを無くしてしまったようで。
一人で探すより二人で探した方が絶対見つかるからと二人で探して。
しばらくしてようやく見つかった。
安心したせいか、お互いに冗談言ったり。
彼の名前は"渡辺さん"と言うらしい。
お仕事でミラノへ向かっている…と。
私と彼のお仕事がミラノで一緒だったり?
…なーんて有り得もしないジョークなんか言ったりして。
サングラスから覗く彼の瞳がとても綺麗だったのが忘れられない…。
空港に着陸して到着ロビーで手続きしていた。
何気なく視線の先に、まさかの渡辺さん?!
自然とお互いに駆け寄って。
また会えたことがただ、ただ嬉しかった。
きっと二度と会うことがない私たちは最後に握手をして別れた。
………………
世界的に活躍されているヘアメイク界では有名は先輩から直々に仕事のオファーを受けて此処、ミラノへ来た。
有名アパレルブランドのレセプションパーティ。
世界的有名な著名人やアーティストなどそれはそれは華やかな場所で。
私は今回、日本からのゲストの方のヘアメイクを任された。
奥の控え室へ待機していると連絡が来ていざご挨拶を…と。
「っ、え?!わ、渡辺さんっ?!」
日本からのゲスト…?
渡辺さんだったんだ!
『ちょっ、待って。えっ?あっ、そう、そうか!そういう事かっ!』
渡辺さんもまさかの再会にびっくりしていて。
そんな彼が無邪気で可愛らしかった。
「…ふふっ、飛行機ではどうも。またお会いしましたね。」
『…いや、マジで。…なんだ?新手のドッキリっすかね…。』
「私、ヘアメイクの仕事で呼ばれてミラノに来たんです。…その担当の方がまさかの…渡辺さん…とは!」
コンコンッとドアがノックされスーツを纏った日本人の男性が入ってきた。
マネ「今日は一日よろしくお願い致します。日本でSnowManというグループのマネジメントを担当しております…、」
「…SnowManの!!あぁ…そうですか。あの渡辺さんだったんですね!…すみません、日本なら絶対気付いていたはずなのに…全然気付かなくて。」
ようやく頭の中で点と点が繋がった。
こんな晴れやかな舞台にゲストとして呼ばれる人って…。
日本では国民的アイドルと言われている、SnowManの渡辺翔太さんだったんだ。
ヘアメイク雑誌や女性誌には常連さんの渡辺さん。
情報に疎い私でも見たことある。
『…いや。逆に僕に気を遣わないでください。普通に…、自然体に接してほしいです。』
本当に普通に接してくれる渡辺さんに親近感を覚えて。
「は、はい!!じゃあ、早速メイク始めさせてもらいますねっ!」
その後は覚えて無いくらい沢山の話をした。
仕事、サウナ、美容、…と色々と話してくれて。
何故か私もリラックスして仕事が出来た。
「…じゃあ。…私のお仕事はここまでです!!」
『あっ、あの!…パーティー、参加…しないんですか?』
…パーティ??
「えっ、パ、パーティーですか?…私は裏方なので…ふふっ、表舞台には出ませんよ。」
必死に何かを伝えようとしているのが分かった。
『あっ、んじゃあ、パーティー終わったらさ、あのー…飯でも行きませんか?いや、あの…パーティーじゃ絶対僕、腹減るし、あの…日本食とか?どうかと…』
…渡辺さんとご飯…
仕事仲間としてなのか?
これが日本だったら絶対にNGだ。
…でもせっかくのお誘いを断る理由も無かった。
「…じゃあ…これ…」
私の連絡先が記載されている名刺を渡した。
「パーティーが終わったらこの番号に連絡くださいね。」
『…あっ、は、はい…。』
きっと。
いや。
これは仕事仲間としての社交辞令だと思った。
日本でまた何かのご縁でお仕事で会った時に忘れないように…。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。