第73話

四季、忘れん坊パニック!
342
2026/03/24 10:00 更新
朝、四季は目覚ましを止めると同時に——


枕元にあるはずのスマホがないことに気づいた。
一ノ瀬四季
……あれ? 昨日ここに置いたよね……?
とりあえず制服に着替えて寮を出る。

数分後、校門で皇后崎とすれ違う。
皇后崎迅
四季、スマホ落としたのか?
一ノ瀬四季
えっ!? なんでわかったの!?
皇后崎迅
これ、お前のだろ
皇后崎は自分のポケットから四季のスマホを取り出す。
一ノ瀬四季
なんで!? なんで皇后崎のポケットに!?
皇后崎迅
知らん。廊下で見つけた。
一ノ瀬四季
(……忘れた? いや、置いたはず……)
朝から自信が砕かれる。



 

四季はロッカー室で体操服に着替えるが——


自分の上履きがない。
……あれぇ!? 上履きさっきまで履いてたよね!?
花魁坂京夜
四季くん、それ持ってるよ?
花魁坂は四季の上履きをそっと差し出す。

四季の足元を見ると“外履きのまま”だった。
一ノ瀬四季
いやもう怖い……俺なに……
花魁坂京夜
大丈夫。そういう日もあるよ。ほら、切り替えよ?
一ノ瀬四季
うう……ありがと……
花魁坂に頭ぽんぽんされて、ちょっと泣きそうになる。




 

四季は筆箱を探していた。
一ノ瀬四季
筆箱が……ない……授業で使ったのに……
遊摺部従児
四季くん。机の上にあったから届けに来たよ〜
一ノ瀬四季
あぁぁ……もう……!
遊摺部従児
今日は“忘れん坊デー”だねぇ
一ノ瀬四季
やだ……恥ずかしい……





次はお弁当箱を失う。
一ノ瀬四季
お弁当ない……!
矢颪碇
四季。お前の弁当、持ってきてたぞ。棚に置き忘れてたぞ
一ノ瀬四季
えっ……棚!? なんで棚!?
矢颪碇
知らん。置いたのはお前だ
一ノ瀬四季
うぅぅぅぅ……(泣きそう)
矢颪は黙って四季の頭を撫でてくれる。
矢颪碇
落ち着け。ほら、一緒に食べるから




四季はまたしても騒ぎを起こす。
一ノ瀬四季
カバンが……ない……ほんとに……ない……!
花魁坂京夜
四季くん、背中に背負ってるよ?
一ノ瀬四季
……?
ゆっくり後ろを触る。
一ノ瀬四季
………………あった……
顔が真っ赤。
花魁坂京夜
ふふ。可愛い日だね、今日は
一ノ瀬四季
やだ! もうやだ! めちゃくちゃ恥ずかしい!!
花魁坂は四季の頬をそっと包む。
花魁坂京夜
平気だよ。なくしても、何回でも僕が見つけるから
一ノ瀬四季
……ヤダ……ありがと……





寝ようとした時——
一ノ瀬四季
パジャマ……が……ない……
(花魁坂が四季の部屋まで来てくれている)
花魁坂京夜
四季くん。今日パジャマ着て寮を歩いてたよね?
一ノ瀬四季
な、何してんの俺ーーー!!
布団に顔を埋めてジタバタ。

花魁坂は笑いながら、優しく背中をさすってくれた。
花魁坂京夜
四季くん、今日は本当に頑張ったね。忘れん坊でも、僕は全部支えるから
一ノ瀬四季
……花魁坂、優しすぎて泣きそう……
花魁坂京夜
泣いてもいいよ。今日の四季くんは特別に可愛い日だから
四季は恥ずかしくて、でも少しだけ嬉しくて、そのまま花魁坂の膝に頭を乗せて眠った。
 
その日、四季が失くしたものは全部戻った。

そしてひとつ増えたものは——


“花魁坂に甘える勇気”だった。

プリ小説オーディオドラマ