この力は…
この世界に来てから
一回だけ、ヒナに無意識に見せた覚えがある。
覚えがあると言ったのは、
この力を使おうとした瞬間に思い出したから。
私はその”死者”の名を呼んだ。
私の真後ろに出ていた靄が、次第に実態を持つ…!
姿をあらわしたその人物は、
ところどころひび割れている
黒銀のくすんだ鎧をまとっており、
黒鉄の槍を腰に差している。
いつ見ても不気味さを感じる。
だが、彼が私を選んだのだ。
すでに”契約”している。
しばらくぽかーんとしていたぐさおは
我に返って、
大剣を構えなおした。
Latteは戸惑ったようにうなずいた。
彼女の手に炎が現れる。
ヴァレノは武器を抜き、
敵に向かっていった。
私と彼の思考は共通している。
ヴァレノがLatteは遠距離攻撃を扱えると
気づいたのもそれのおかげ。
Latteさん、ヴァレノ、私で射程外から敵の守りを崩し、
その隙をぐさおさんの大打撃を食らわせる。
隣にいたLatteはとても集中している様子で魔法を放った。
あれ?と思った。
大剣を手にしながら、
私は炎の矢を放ったLatteに違和感を持った。
彼女は集中していて気づいていないようだが、
彼女の扱う炎の矢。
無詠唱魔法に成長を遂げている。
…作戦は、察せた。
私以外、敵の射程距離より長い攻撃ができる。
それで守りを崩そうというのだろう。
そしてそこを私の大剣で…
無心で攻撃魔法を発動し続ける。
炎の矢は攻撃魔法にしては簡単な部類。
消費する魔力も比較的少ない。
今はただひたすらに、
隙ができるまで撃つのみだ。
言われるが早いが、
鬼が飛び出して大剣を振り上げる。
…久々にこの力を使ったからなのか、
疲れがどっと出た。
悪臭を放つ巨体がすぐそばで倒れている。
…はっ!そういえば…!
カロナの豪快な攻撃に吹っ飛ばされ、
彼方へ消えた。
大丈夫だろうか…?
ぐさおが地面を見ながら言った。
私とLatteはその場に近づく。
吹っ飛ばされた時に、
オクタロンの体から破片が出たのだろう。
私は黒いかけらを手に入れた。
その時、大きな地響き。
周りを見る。
ここから遠くではあるが、
"大きなモンスターが何体もいる"。
ぐさおが一方向を指差して叫ぶ。
そのモンスターは巨体で、
人ほどの大きさもある一角を持っている。
私は見たことのないモンスター…
…なるほど。
私はぐさおの発言を聞いて察した。
Latteとぐさおがこちらを向いて驚く。
こんなことをするのは、
あの時対峙した黒フードに違いない。
だとすれば本体を叩けばいいという話なのだが…
逃げる速度とあの戦闘能力。
この広い空間で到底見つけられるものではないし、
遭遇して戦ったとしても敵うかどうか…
ぐさおが口を開く。
さらに彼女は核心を突く。
分かれさせて力を分散させているということか。
つまり、敵にとっては、力がまとまるのを嫌がっている。
…この空間では、他のチームと会うのは至難の業だろう。
会った場合、絶対に離れないようにしないとだめだ。
周りには巨大な怪物たちが徘徊している。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。