第10話

抗い
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2025/11/06 06:05 更新
玄関の前

森の闇と、館の深い影に挟まれ、動けずに居た

背後に立つ巽は、もはや、いつもの穏やかな護衛人ではなかった

彼の瞳は、私に向けられる”青い光”そのものが

私を捕らえる冷たい鎖のように感じられた


風早 巽
風早 巽
お戻りください、あなたの下の名前様
外には、あなたの下の名前様の純粋さを汚そうとする『悪意』しかありません


彼の指先が、私の肩にふれる

その瞬間、私の全身に激しい冷気が走り抜けた


思わず、彼の冷たい手を払い除けた


あなた
違う!外が危険なんじゃない⋯
あなたが危険なの、『巽』!
風早 巽
風早 巽
俺⋯ですか?

巽は悲しげに瞳を伏せた

しかし、その声は微塵も揺るがない

風早 巽
風早 巽
俺はあなたの下の名前様を守っているのです
あの汚れた紙切れは、俺からあなたの下の名前様を引き離そうとする悪霊の嘘です
風早 巽
風早 巽
あなたの下の名前様は、俺を信じてください
あなた
嘘だ⋯!
あなた
だって、あの紙切れは⋯あなたが炎で消した!
あなたは、火を『持っていなかった』のに!


その言葉で、巽の表情が、『初めて』完全に崩れた

彼の顔から、作り上げられた穏やかな微笑みが消え

底しれない虚無感と焦りが露わになる

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