ずり…ずり……
何か這うような音。
この形態になって走り続け30分弱が経過した。
当然警戒を怠らずに。
ただ平衡感覚が少しづつなくなっていく。
悪魔の姿になると五感が恐ろしく敏感になる。
致命傷を与え、分解される前に工場に再び戻す。
これが私の今やるべき事だ。
気を引かせて一気に仕留める。
殺してはいけない。絶対に。
殺したら自分も殺されるどころか、上の階級の奴らも被害に遭う。それだけはダメだ。
ドオオン…!!
すぐそこにあった一番大きな木を鉤爪で切り裂く。
…予想通り、ハスターが寄ってくる。
気配を殺して殺気も無くす。
ハスターは、歩くとぬるぬるとした液が出る。
痕跡。証拠。
失敗すれば終わり。
気合を込めて、仕掛けた。
ドオオン…
結果から言って、成功だ。
奇襲は成功した。
なのに、何故か形勢逆転だ。
悪魔形態の状態はただえさえ体力を消費して疲れるのに、出血・打撲に加え骨折までしてるとなれば、時間の問題だ。
ハスターは私達…いや、上全体が想定していた強さよりはるかに強かった。
私一人で良かった。
死ぬなら誰も巻き込みたくない。
ハスターは私と同じ、時間が問題だ。
遠くなる意識の中、聞き慣れた声が聞こえてきた。
幻聴だろうか。
「_____ラック!!!!!!」
旧政府警備特殊部隊第9グループ
本部 医務室
アンだけは怒らせないようにしていたのに。
コンコン
「アンネ・クラーテです、入ってもよろしいでしょうか」
…思ったより冷静…じゃない、黒いオーラが見える。
!?!?!?
ヴァリスさん?
ヨヒラ大佐?
アンはともかく裏切られた気分。
*
いやこれ多分私が弱いのが原因だな…
悪魔形態の特訓より実践訓練をしっかりしておけばよかった。
**
ちなみにヴァリスさんとヨヒラ大佐は不在だ。
「二人の空間を邪魔しちゃ悪いから」とのこと。
どういうこと?



















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!