
辿り着いた俺達はその光景に驚いた。
しかし、花見の季節だと言うのに、何故かその場所には俺達だけしかいなかった。
父さんの言う通り、とても幻想的な世界が広がっていた。
赤い橋の両側には紫の藤の花が絶え間なく敷きつめられていた。
そしてそれはトンネルのような形になっていて、橋全体を覆っている。
橋を渡った向こう側にはぽっかりと小さな島が浮かび、中央には満開の桜が咲き誇っている。

海上地図
(※実際は藤の花が橋を覆っていて、橋は上から見えません)


俺は思わず呟いていた。
綝も目を輝かせて、目の前に広がる景色を眺めていた。
両親はもう随分先に進んでいるようだ。
橋の3分の1を渡ったところでも姿は見当たらない。
俺達もゆっくりと橋を渡る。
つくづく自分が嫌になる。
ゆっくり、ゆっくり、俺達は橋を渡る。
その間ずっと綝は隣で俺に合わせてくれる。
綝は俺を気遣ってか、橋の真ん中に来た所で橋に寄りかかって藤の花を見始めた。
俺も綝の隣に並び、藤の花を見た。
綝は嬉しそうに笑った。

やっと俺の言葉を理解したのか遅れて顔が真っ赤になる綝がおかしくて思わず笑ってしまう。
急に慌てだしたのがまた可愛すぎて俺は耐えきれず綝にキスをした。



















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!