グンッと先ほどよりも強い力で引き寄せられ、荼毘の胸に飛び込むような形になってしまった。
そのまま後頭部を押さえつけて胸に顔を埋めさせられた。
グイグイと荼毘の胸板やら肩やらを押し返すがびくともしない。
が、体もツギハギだらけだということに途中で気づき押し返そうにも躊躇してしまう。
押し返した胸の隙間からちらりと見えた、荼毘の炎。
掌から出される、燃え盛る蒼炎。
その炎は、とても綺麗で
見惚れてしまった。
突然抵抗をやめた私に、荼毘は先ほどまでの力の強さを弱めて私をその腕に収めた。
荼毘は静かにそう言った。
どこか切なそうに、苦しそうに
その視線は遠くに向けられていた。
私は荼毘に向き合った。
睨みながらそう言い放つと、荼毘は小さく笑い、掌から蒼炎を出した。
何をする気なのかと思って荼毘の顔を見ると、彼と目が合う。
そう言って荼毘は抱きしめたまま、私の髪を払い顔を近づけてきた。
次の瞬間
首筋に鈍い痛みが走り、顔を顰める。
驚きと相まって首筋がズキズキとより痛く感じる。
意味深な笑みを残して、荼毘は森の奥へと消えていった。
最後に何か言っていたようだが、すぐに距離が離れて声も小さかったためよく聞き取れなかった。
悪い顔をしていたのはよく見えたが。
持参した時計を見ると、時刻は10時を指し示していた。
私は方角を確認して、危険を回避するために最短距離からは少し離れた道を進んだ。
皆には大変申し訳ないが、致し方ない。
皆を探してさらに迷子になるのは1番避けたい事態なのだ。
2時間後
施設前
第58話 終わり
読まなくてもいい補足
ピクシーボブは荼毘とあなたの下の名前が接触したときあなたの下の名前を見失っていたので荼毘の存在には気づいていません。
元々、土魔獣を配置してそれが倒されたらそこにいることがわかるみたいな感覚なので位置感覚はわかっても視覚は共有できません(ということにしておいてください🙇)

















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。