<澄知side>
最悪だ、またやってしまった。
美『嫌や!もう口利かん!!』
俺の彼女のみこちゃんは、そう言って涙目で怒って、それから本当に口を利いてくれない。
このままだと、フラれてしまう。
それはなんとしてでも、避けたかった。
俺は昔から、モテる方だとは自覚してきた。
バレンタインデーに貰うチョコの数とか、告白された回数とかを数えればそれは、いやでも思い知らされる。
だけど、俺から人を好きになんてなったことがなかった。
そんな時に、みこちゃんが現れた。
天然で、ドジっ子で、助けてあげるといつも明るく可愛らしく笑って「ありがとう」とちょっと関西訛りな口調で言ってくれる。
そんなみこちゃんに、俺は、恋をした。
初めてだった。
俺がゲイだというのは、その時知った。
だけど俺は、性格とキャラ的に、お人好しでなければならない。
他の人に冷たく当たるとどうしても後から罪悪感が襲ってくるし、そもそも咄嗟にしてしまうことだから直しようもない。
みこちゃんは意外と嫉妬深くて、俺が他の子に笑いかけているのが気に食わないらしい。
俺だってみこちゃんが嫌がることをしたくはない。
だけど、でも、直すことができずにいた。
いくらそのことを言ったとて、こうなったみこちゃんはきっと許してはくれない。
なら、証拠を提示しなくては。
これをしたことで、みこちゃんにちゃんと愛を伝えたことで、みこちゃんに本格的に堕ちても、俺は構わないから。
もう取り繕ったりしないから。
澄「みこちゃん。」
丁度俺の席の隣の通路を通りかかったみこちゃんを呼び止め、その腕を掴む。
逃げないように、痛くはしないけど、しっかり。
みこちゃんは少しだけ顔を赤くさせて、そして、ふいっと俺から目を逸らした。
まだ、怒っているらしい。
口を利かずにいようとしているらしい。
だけど俺は、いつもの俺らしくなくみこちゃんの腕を引っ張り、自分も立ち上がる。
そしてそのまま、俺はみこちゃんを引っ張って教室から出た。
びっくりしたような、怒ったような顔を俺に向けてくるみこちゃん。
でもそんな顔をしたいのは、こっちなのかもしれないね。
性格的に仕方がないと何度も言ったのに、みこちゃんは聞いてくれなかった。
たった1度だけ女子生徒と笑って話していただけで、浮気を疑われた。
そんなに俺が、みこちゃんに興味がないと思われているのかなあ?
そうだったらそれは、、、許せないな。
美「ちょっと!どこ連れて行くん!?」
澄「校舎裏。人のいないところで、ちゃんとふたりで話した方が良いと思って。」
やや冷たく言い切ると、みこちゃんは黙り込んだ。
俺が掴んでいる手が、小刻みに震えている。
離別を言い渡されるのではないかと、不安に思っているのだろうか。
だけど、それを言ってもおかしくないくらい、俺の声は冷たいままだった。
冷たい言い方をするだけでいつもは罪悪感が襲ってくるのに、今日はそんなことはなくて。
俺が余程、みこちゃんと離れないようにするために必死なのだということを再確認した。
俺は、みこちゃんが好きだから。
ねえ、みこちゃん。
いつだって、俺の言葉に嘘偽りはなかったよ。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。