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第19話

#19
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2026/01/30 12:03 更新
翌日。
昼休みのチャイムが鳴ると同時に、イェミが椅子を引く音を立てて立ち上がった。
「ね、購買行こ。今日メロンパン残ってる気がする」
そんな他愛もないことを言いながら、私の腕を軽く引いてくる。
「いいよ」
頷いて、教室を出た、その直後だった。
「あ! あの——」
背中にかかった声は、少しだけ躊躇いを含んでいて、不思議と聞き覚えがあった。
足を止めて振り返ると、保健室で会ったあの背の高い男の子が立っていた。制服の袖を少しめくり上げ、手には紙切れを持って、少し緊張した様子でこちらを見上げている。
「あなたさんて、いますか?」
私の名前だ。
さらに続けて、彼は少しだけ言葉を足す。
「実用舞踏科の」
イェミと目を合わせる。
お互いに眉を少し寄せて、困惑と興味が混じった表情を交わしたあと、私は小さく息をつき答える。
「私ですけど……」
すると彼の顔がぱっと明るくなり、安心したように微笑む。
「あー!そうだったんだ」
彼は少し前に身を乗り出して、手元のメモを差し出してきた。
「チョン・ユノです。実用音楽科の」 
と自己紹介されるが、残念ながらその名前には心当たりがなく、私は軽く「はあ」と返すしかなかった。
「これ」
差し出された紙切れを受け取りながら、私は無意識にイェミを見る。彼女は何も言わず、目だけで「なにそれ?」と問いかけてきた。メモに視線を落とすと、そこには手書きの電話番号。
その瞬間、イェミと視線がぶつかり、言葉を使わない会話が始まる。
――え何、ナンパ?
――違うでしょ、昼休みだよ?
そんなやり取りをしていると、ユノがさらに慌てて首を振った。
「あに、僕のじゃなくて」

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