【実弥side】
環奈との二人旅を終えて、風柱邸に帰り三カ月が過ぎた頃‥‥。
暦は七月を迎えていた。
つわりも落ち着いた環奈と、玄弥と共に、実弥は町に来ていた。
笑顔を浮かべる実弥は、その裏で気に食わないことがあった‥‥。
実弥はもちろん環奈の手を繋いでいるのだが、彼女の反対側の手を玄弥がしっかりと握っているのだった。
環奈が愛らしい笑顔を見せている。
実弥はそっと微笑む。
実弥はピクリと眉をゆらす。
チヨ婆とはこの辺で有名な産婆だった。
実弥も環奈を連れて、定期的に妊娠経過を診てもらいに行っていた。
実弥がそう言うと、玄弥が照れたように頭を掻いた。
玄弥の素直な思いやりを前にして、実弥は自分の嫉妬深さにほとほと嫌気がさした。
実弥はそっと息を吐き、気を取り直して歩き出す。
三人は仲良く甘味処へ向かった。
実弥と環奈が並んで座り、環奈の向かいの席に玄弥が座った。
実弥はふと、店内を見渡す。
店内では、玄弥と年の近そうな店の娘が客の注文をとっていた。
店の娘が愛嬌のある笑顔で注文を取りに来た。
三人は仲良くアイスクリームを注文した。
そして、注文を聞いた店の娘が去り際に、玄弥に向かってそっと笑みをこぼした。
実弥は心の中でほくそ笑む。
実弥は頬杖をつきながらそう告げた。
実弥の言葉を理解していない様子の玄弥は眉を寄せていた。
実弥の眉がピクピクッとゆれた。
少なからず笑みも引きつる。
環奈の言葉に不意を突かれた実弥は、頬杖の手のひらから顔を落とした。
と思いながら、環奈を見ると何やらやきもちを妬いた顔でこちらを見ていた。
その愛らしさといったら‥‥。
実弥の顔が熱くなる。
実弥は思わず口付けしそうになるのをぐっと堪えて微笑んだ。
玄弥の言葉がちくいち雰囲気をぶち壊す。
次に来た店、呉服屋では‥‥。
実弥の視線の先では、環奈と玄弥が仲良く着物を見ている。
呉服屋の女店主が、ニコニコと環奈と玄弥に‥‥。
『環奈と玄弥に』そう告げていた。
ぶちぶちぶちぃ‥‥と実弥の頭の中の血管がはち切れたような気がした。
それでも実弥は我慢して、顔中青筋だらけにしながら愛想笑いを作った。
そう告げた呉服屋の女店主が、店の奥からお見合い写真を持ってきた。
玄弥は難色を示し、気まずくなった三人は皆で店を後にした。
三人は店の外でもしばし、気まずい雰囲気を引きずっていた。
気を利かせたのであろう環奈が話し出す。
実弥はたまらず、玄弥に声をかけた。
こうして騒がしい買い物は終了した。
【玄弥side】
玄弥は環奈のことが大好きだった。
もちろん実弥のことも大好きだった。
玄弥にとってふたりは自慢の家族だった。
そうだとしても、家族間のやりとりにまで嫉妬されるのはかなわない‥‥。
玄弥は深いため息をこぼした。
ふと、台所に目をやると環奈と実弥が仲睦まじく炊事を行っていた。
その二人の雰囲気は見ている方も幸せになるような、そんな温かさがあった。
玄弥がやや肩を落として来た廊下を戻ろうとすると、
大好きな声たちに名を呼ばれる。
玄弥はその幸せな光景に、涙が出そうになった‥‥。
いつまでもここにいたい‥‥。
そう思うのは、わがままだろうか‥‥。
自分にもいつか、唯一無二の愛する人ができるだろうか‥‥。
実弥にとっての環奈のように‥‥。
その時が来るまで、今はまだめいっぱい甘えさせて欲しい‥‥。
大好きな兄と姉に‥‥。
唯一無二の弟として‥‥。
読者の皆様お久しぶりです。みゃーるさんです😊
もうすぐ映画が公開されますね☺️✨
久しぶりにこちらの物語が書きたくなって番外編を書いてみました。
ほのぼのとした日常の1ページといいますか☺️
いかがでしたか?😉
楽しんでいただけたら嬉しいです☺️
ご拝読いただきありがとうございました!🙇♀️✨













編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。