第175話

番外編 唯一無二の弟として 実弥・玄弥side
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2025/07/05 13:06 更新


【実弥side】


環奈との二人旅を終えて、風柱邸に帰り三カ月が過ぎた頃‥‥。


こよみは七月を迎えていた。


つわりも落ち着いた環奈と、玄弥と共に、実弥は町に来ていた。


不死川環奈
実弥さん、町はにぎわっていますねー
不死川実弥
あ?そだなァ


笑顔を浮かべる実弥は、その裏で気に食わないことがあった‥‥。


実弥はもちろん環奈の手を繋いでいるのだが、彼女の反対側の手を玄弥がしっかりと握っているのだった。


不死川玄弥
あ!義姉ねえちゃん義姉ちゃん!
あそこの甘味処とかいいんじゃね?
不死川環奈
あ、アイスクリーム、美味しそうですねー


環奈が愛らしい笑顔を見せている。


不死川実弥
食いてェのかァ?
不死川環奈
あ、はい‥‥もしよろしければ
不死川実弥
もちろんいいよ


実弥はそっと微笑む。

不死川実弥
つわりも落ち着いて、食えるようになって良かったなァ
不死川環奈
ふふ、そうですね、ご心配おかけしました
不死川玄弥
義姉ちゃん、腹に子がいる時は緑の濃い野菜とか、肉や魚も食べるのが良いみてーだぞ
不死川玄弥
あ、ただし肉や魚はよく焼かないとダメみたいだけどな
不死川環奈
そうなんですね、帰りに買っていきましょうか
不死川環奈
玄弥君、詳しいですね
不死川玄弥
え?あ、まぁな!チヨ婆さんに聞いてさ


実弥はピクリと眉をゆらす。


チヨ婆とはこの辺で有名な産婆さんばだった。


実弥も環奈を連れて、定期的に妊娠経過を診てもらいに行っていた。


不死川実弥
何で玄弥がチヨ婆んとこ通ってんだよォ‥‥


実弥がそう言うと、玄弥が照れたように頭をいた。


不死川玄弥
あぁ、ほら‥‥俺も‥‥力になりたいっつうかさっ‥‥叔父おじになるんだし‥‥
不死川実弥
(‥‥あァ、そうだよな、ったく‥‥俺もとことん嫉妬深しっとぶけェよなァ)


玄弥の素直な思いやりを前にして、実弥は自分の嫉妬深さにほとほと嫌気がさした。


実弥はそっと息を吐き、気を取り直して歩き出す。

不死川実弥
んじゃ、甘味処行こうぜェ


三人は仲良く甘味処へ向かった。


実弥と環奈が並んで座り、環奈の向かいの席に玄弥が座った。


実弥はふと、店内を見渡す。


店内では、玄弥と年の近そうな店の娘が客の注文をとっていた。


甘味処の店の娘
いらっしゃいませ、ご注文はお決まりですか?


店の娘が愛嬌あいきょうのある笑顔で注文を取りに来た。


三人は仲良くアイスクリームを注文した。


そして、注文を聞いた店の娘が去り際に、玄弥に向かってそっと笑みをこぼした。


不死川実弥
(‥‥へぇ‥‥)


実弥は心の中でほくそ笑む。


不死川実弥
玄弥ァ、お前、いたやつとかいねぇのかよォ


実弥は頬杖ほおづえをつきながらそう告げた。

不死川玄弥
あ?何だよ急に‥‥
不死川実弥
ほら見てみろォ、さっきのじょうさん、ずいぶん愛想が良いじゃねェかァ
不死川実弥
甘味処の娘さんなら、さぞ手料理もうめェんじゃねェのかァ?


実弥の言葉を理解していない様子の玄弥は眉を寄せていた。

不死川玄弥
あぁ?いや‥‥つか俺、義姉ちゃんの手料理が好きだし


実弥の眉がピクピクッとゆれた。


少なからず笑みも引きつる。

不死川環奈
ふふ、ありがとうございます玄弥君。
そのように言っていただけて嬉しいです
不死川環奈
実弥さん、あの‥‥そんなに先程の方が気になりますか?
不死川実弥
んあ!?


環奈の言葉に不意を突かれた実弥は、頬杖の手のひらから顔を落とした。

不死川実弥
(んな訳あるかァ)


と思いながら、環奈を見ると何やらやきもちを妬いた顔でこちらを見ていた。




その愛らしさといったら‥‥。




実弥の顔が熱くなる。



実弥は思わず口付けしそうになるのをぐっとこらえて微笑んだ。


不死川実弥
環奈がいんのに、他の女なんか気になるかよォ
不死川玄弥
そーだよそーだよ、義姉ちゃんは誰より一番可愛いよ
不死川実弥
(‥‥玄弥ァァァ、んでお前が言うんだよォ)


玄弥の言葉がちくいち雰囲気をぶち壊す。











次に来た店、呉服屋ごふくやでは‥‥。

不死川環奈
わぁ、可愛らしい着物がいっぱいありますね
不死川玄弥
義姉ちゃん!これなんかどぉ?
不死川玄弥
男の子だったらこれ、女の子だったらこの桃色の着物とか可愛いんじゃね?
不死川環奈
うわぁ、可愛いですね


実弥の視線の先では、環奈と玄弥が仲良く着物を見ている。

呉服屋の女店主
いらっしゃいませ、まぁまぁお若い夫婦めおとさんだこと


呉服屋の女店主が、ニコニコと環奈と玄弥に‥‥。


『環奈と玄弥に』そう告げていた。



ぶちぶちぶちぃ‥‥と実弥の頭の中の血管がはち切れたような気がした。


それでも実弥は我慢して、顔中青筋だらけにしながら愛想あいそ笑いを作った。


不死川実弥
あ‥‥玄弥ァ、お前おいっ子やめいっ子の服選んでねェで、見合いの服でも探せよォ‥‥
不死川実弥
俺が良い縁談探してきてやっからァ‥‥
不死川玄弥
えぇ、俺‥‥見合いなんかいいし‥‥
不死川玄弥
今は義姉ちゃんの子供が無事生まれるか、
そっちの方が大事だし
不死川実弥
‥‥テメェの子供じゃねェだろォがァ、
腹の子は俺の子なんだよォ
不死川玄弥
んな事わかってるよぉ
呉服屋の女店主
あらぁ、あなた夫婦じゃなかったのね、
お見合い相手をお探し?
呉服屋の女店主
知り合いにちょうどいい子がいるのよぉ


そう告げた呉服屋の女店主が、店の奥からお見合い写真を持ってきた。


呉服屋の女店主
この子なんだけど
不死川玄弥
‥‥はぁ‥‥まぁ‥‥考えときます‥‥


玄弥は難色なんしょくを示し、気まずくなった三人は皆で店を後にした。


三人は店の外でもしばし、気まずい雰囲気を引きずっていた。


不死川環奈
先程の店主さん、ご親切な方でしたね


気をかせたのであろう環奈が話し出す。

不死川実弥
あァ、まぁなァ‥‥
不死川玄弥
写真の人より、義姉ちゃんの方がよっぽど綺麗だし
不死川実弥
おい、玄弥ァ


実弥はたまらず、玄弥に声をかけた。

不死川玄弥
ん?どうしたんだよ兄貴
不死川実弥
さっきからねーちゃんねーちゃんうっせェんだよォ
不死川実弥
環奈ほどのイイ女はなァ、そうそういねぇんだよ、現実見ろ馬鹿野郎がァッ!
不死川環奈
ひぇぇえぇ、実弥様!落ち着いて下さぁい!


こうして騒がしい買い物は終了した。






【玄弥side】

不死川玄弥
(‥‥ったく、何だよ兄貴のやつ、俺が何したっていうんだよ‥‥)


玄弥は環奈のことが大好きだった。


もちろん実弥のことも大好きだった。


玄弥にとってふたりは自慢の家族だった。


不死川玄弥
(‥‥兄貴、やきもち妬きだからなぁ)


そうだとしても、家族間のやりとりにまで嫉妬しっとされるのはかなわない‥‥。


玄弥は深いため息をこぼした。


ふと、台所に目をやると環奈と実弥が仲睦まじく炊事を行っていた。


その二人の雰囲気は見ている方も幸せになるような、そんな温かさがあった。


不死川玄弥
邪魔じゃましちゃ、わりぃかな‥‥)


玄弥がやや肩を落として来た廊下を戻ろうとすると、
大好きな声たちに名を呼ばれる。

不死川実弥
玄弥ァ、お前も食うんだから手伝えよォ
お前がすすめた食材だろォ
不死川環奈
玄弥君、一緒にご飯作りましょう
不死川玄弥
(‥‥あ‥‥)


玄弥はその幸せな光景に、涙が出そうになった‥‥。

不死川玄弥
は、始めからそのつもりだしっ!










いつまでもここにいたい‥‥。





そう思うのは、わがままだろうか‥‥。





自分にもいつか、唯一無二の愛する人ができるだろうか‥‥。





実弥にとっての環奈のように‥‥。





その時が来るまで、今はまだめいっぱい甘えさせて欲しい‥‥。





大好きな兄と姉に‥‥。





唯一無二ゆいいつむにの弟として‥‥。


















読者の皆様お久しぶりです。みゃーるさんです😊


もうすぐ映画が公開されますね☺️✨


久しぶりにこちらの物語が書きたくなって番外編を書いてみました。


ほのぼのとした日常の1ページといいますか☺️


いかがでしたか?😉


楽しんでいただけたら嬉しいです☺️


ご拝読いただきありがとうございました!🙇‍♀️✨






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