前の話
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流輝とは、気づいたら隣にいた。
小学校も、中学も、高校も。
同じ帰り道、くだらない話をしながら
肩を並べて歩いていた。
「幼なじみ」って言葉で片付けられるけど、
私にとってはもっと特別だった。
流輝のことが好きって気づくのにも
そう時間はかからなかった。
でも言えなかった。
この距離が心地よくて、壊れるのが怖くて。
告白して振られて、
流輝がいなくなる未来のほうが怖かった。
だから、ずっと笑ってた。
ただの幼なじみみたいに。
──なのに。
「流輝、先輩といい感じらしいよ」
そんな噂を聞いたのは、高校二年の春だった。
胸の奥が、ぎゅっと縮んだ。
流輝と先輩が隣に並んでる姿を
想像したら、胸が詰まりそうだった。
(言わなかったのは、自分なのに)
なのに、苦しくてたまらなかった。
そのタイミングで、瑛宜くんに告白された。
「ずっと好きだった。付き合ってほしい」
優しくて、まっすぐで、
私のことをちゃんと見てくれる人。
でも…
「ごめん、私諦めきれない人がいて、」
「うん、知ってる。」
「…え?」
「それでもいいよ。俺が忘れさせてあげるから」
ただ、誰かに心の穴を埋めてほしかった。
流輝への気持ちを消したかった。
「……うん、お願いします」
そう言った瞬間、胸がちくっとした。
瑛宜くんといる時間は楽しかった。
放課後に一緒に帰って、コンビニで
アイス分けて、夜は毎日電話して。
でも。
笑ったあと、ふと流輝の顔が浮かぶ。
(消えてよ)
何度願っても、心の中の流輝は、
消えてくれなかった。
放課後、一緒に帰る約束をした瑛宜くんを
待つため教室に入ると
流輝が机に突っ伏して寝ていた。
夕陽が差し込んで、静かで、2人以外誰もいない。
私は、そっと近づいた。
こんな距離で、流輝を見つめられるのは久しぶりだった。
(先輩と、うまくいってるのかな)
胸がじわっと熱くなる。
もう、自分には関係ないのに。
小さく、息が漏れた。
「……私のほうが、好きだったのにな……」
言うつもりなんてなかった。
自分の口から出た言葉に罪悪感を覚え、
慌てて流輝から目を逸らし、
教室のドアへ向かおうとした瞬間──
ぐっと、後ろから手を掴まれた。
「……え」
心臓が跳ねる。
振り返ると、流輝が顔を上げ、
真っ直ぐ私を見つめていた。
さっきまで寝ていたはずなのに。
「流輝、起きてたの、!?」
声が裏返る。
流輝は、真っ直ぐ私を見ていた。
逃げ場のない距離。
流輝はゆっくりと口を開く。
「なら、」
静かな声。
でも、揺れていた。
真っ直ぐ私を見つめる流輝の目は、
逸らしたくても逸らせない。
「ならなんで、俺から離れたんだよ、」
そう口にした流輝の声は
どこか弱々しかった_____。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。