私の世界は、いつも灰色だ。
精神的な意味なんかじゃない。
私の瞳に映る世界には、色がない。
それは、生まれた頃からそうだった。

【 美しい桜の花弁の裏側 】無彩 美桜

【 モノクロの世界に生きる一般人 】無彩 桜音
私のほっぺをむにむにと触ってくるのは、8歳上のいとこである美桜さん。私が小学校に行く前にいつもここに来る、少し変わった人。
制服を着崩してるし、しょっちゅう誰かと喧嘩してるらしい。でも、喧嘩をする理由は私に教えてくれない。
お母さんは言ってた。美桜さんには桜色のインナーが入ってて、とても綺麗なんだって。
でも私はそれが分からない。少し他の髪の毛と色が変わってることはわかるけど、それだけ。
___色が見えないのって、本当に不便。
美桜さんは私が人見知りなことをよく分かってくれている。だから美桜さんは通学班の子と馴染めない私にわざわざ毎日話しかけてくれるんだ。
そして美桜さんは、とっても頭がいいの。
私と離れるのが嫌らしくて、桜花学園?ってところに受験しなかったらしいけど、入試の過去問を全問正解したくらい勉強が出来るらしい。
あと美桜さんは、私が色が分からないことを知っているの。だから将来は私が色が分かるようになるためにお医者さんになるって言ってた。
でも、美桜さんが本当になりたい職業は学校の先生なんだよ。だから私としては学校の先生になって欲しいんだけど……。……優しいよね、美桜さん。

【 幸運体質な極普通の少女 】咲花 瑠花

【 夢を知らないいつか咲く可能性の花】咲花 花菜
この二人は同じ通学班のお友達。瑠花ちゃんは1歳年下で、花菜ちゃんは4歳年下。私は今4年生だから……瑠花ちゃんは3年生で花菜ちゃんは1年生なの。すっごく嬉しい仲良しな姉妹で、羨ましいなぁ。
美桜さんが言ってた。瑠花ちゃんの髪色は綺麗なエメラルドグリーン?ってやつで、花菜ちゃんの髪色はローズクォーツっていう宝石の色みたいなの。
でもそれは私には分からない。色が見えるなんて、いいなぁ。羨ましいなぁ。
私達が歩き出したのを見たあと、美桜さんはヘルメットを被らないで自転車を漕いで自分の学校に向かっていく。道は反対方向。ちょっとだけ寂しいなぁ。
- 4年2組 -

【 月と並ぶシリウスの輝き 】夜空 琉生
教室についてから声を掛けてくれたのは昔から仲がいい幼馴染の琉生。琉生は普段、コンタクトをしてて周りより少しだけ背が小さい。実際、私も琉生より背が高いんだ。……まぁ、そんなこと言ったら琉生は不貞腐れちゃうから言わないんだけど。
そして琉生は、いつもどこかしら怪我をしている。誰かに殴られたような跡。でも琉生のお父さんやお母さんはそんなことをする人じゃないから、なんでそんな怪我をしてるのかが私は不思議だ。琉生も全然教えてくれないし……。
琉生は同い年なのに、どこか弟みたいに感じる。琉生の背が低いから……ってのもあるかもしれないけど、なんというか……年相応の男の子って感じなのかな?だからつい琉生のわがままを許しちゃう自分がいる。……いやでもやっぱ2つ結びをするのは恥ずかしい……。可愛い子がやるから似合うのに……。
……そうだ。たまには少しだけ仕返ししちゃおうかな。
なんとなく、琉生の頭をよしよしと撫でてみる。……やっぱり弟みたいだなぁ。びっくりしてる琉生、可愛い。顔を赤くしてるのかな?見てみたいなぁ……。

【 将来を期待されている巫候補 】神庄 結翔
その時、教室に戻ってきた神庄くんが私達のところにやってきた。片手にはボールを持ってるし、少しだけ服も汚れてる。……朝から運動場で遊んでたのかな。陽キャだ……。
神庄くんと琉生は同じ通学班。だから仲良しなんだけど、私と神庄くんはそんなに関わりがない。だから私からしたら少し気まずいし……何よりなんか怖い。
だって神庄くん陽キャだもん!!ど陰キャな私と大違いなの!!怖いって思っても仕方ないよね!!
二人は“ 堕天使 ”の噂を信じてないみたい。確かに琉生の言う通り、そんな美味しい話が本当にあるかどうかはわからない。それに噂だ。信憑性がない。……でも。
___やってみるだけ、無駄ではない……よね?
- 放課後 -
帰る支度をしている時、琉生はニコニコと笑顔を浮かべながら私のところにやってきた。
私と琉生はいつも一緒に帰ってる。琉生が私と帰る理由は、上級生から守るためって言ってた。……どうやらその人達は私が“ 色が分からない ”ということを理由に笑ってくるらしい。酷いよね。
……でも、琉生には申し訳ないなぁ。私だって色が分かりさえすれば……そんなことにはならないかもしれないのに。
私と琉生は、川に近い信号でお別れ。そこから私は10分歩けば家に着く。……せっかくだからその時に川に寄ってみようかな。
琉生は私と別れる時、いつも悲しそうな顔をする。こういう所も弟っぽくて可愛いって思っちゃうんだよなぁ。琉生が弟だったら、毎日楽しそうだなぁ。
なんてことをぼんやりと考えながら私は琉生に手を振って、川を目指して歩いていく。
___そして。
川が流れていく音がそこら中から聞こえてくる。なんだかすっごく落ち着くなぁ……。
そんなことを思いながら私はノートの切れ端をビリッと破って、“ 色がわかるようになりたい ”と書いてみた。そしてそのまま、それを川に流してみる。
それから数分。その場でしゃがみこんで見たけど、何も成果はなかった。誰かがいるような気配もない。
……まぁ、そうだよね。
結局はただの噂。誰かが作った、私みたいな馬鹿を笑うためのもの。
……帰ろう。そう思って立ち上がった、その時。
『 ___この妾を呼ぶなんて、お主は相当モノ好きなんじゃな 』
『 ___って……お主、妾と同じ髪色をしているのぉ。真っ黒なインナーやメッシュは入ってないみたいじゃが…… 』
『 ___まぁ、妾と同じ髪色をしているのは当たり前か。なんせお主は、“ 堕ちる前 ”の妾の魂が宿った___ 』
目の前に、1人の女性が現れた。その人は大きな翼を持っていて、左目に眼帯を付けている。喋り方もなんか個性的。……あとこの人、何を言ってるのかな。私にはよく分からないや……。
『 ___さて。自己紹介と行こうかのぉ 』

【 慈善で堕ち散った天使の魂 】ハマルティア・ディカスティース
この人が堕天使……。言われてみれば確かに、この人からはそんな雰囲気が感じられるな……。でも、悲しそうな笑顔をしてる。どうしたんだろう。
堕天使だからってのもあるかもしれないけど、この人……少しだけ雰囲気怖いな。でも、どこか優しいようにも見える。……変なの。

確かにこの人の言う通りだ。私の願いが書かれている紙は濡れたせいで文字が滲んでる。この人が……堕天使さんが確認できなくても、仕方がない。
……改めて言葉にするのは少し恥ずかしいけど……。
この人も、色が分からないんだ。……あれ?でもそれならどうしてこの人は私の髪の毛をみてなんか話していたの?……分からないな。
その言葉に、少しだけ躊躇ってしまう自分がいた。契約をすれば私は色が分かるようになるはずなのに……やっぱりちょっと怖いと思ってる自分がいるのかな。……でも……だとしても……!!
どうしてそんなことを言うのだろう。それが私には少し理解し難かった。別にそんなことを言わなくても、私は色が分かればそれでいいのに……。
なんてことを考えていると、堕天使さんは少しだけ申し訳なさそうな顔をしながら口を開いた。
『 ___契約成立じゃ 』
その瞬間、堕天使さんは姿を消した。そしてタイミングよく、目の前が真っ白になるような感覚を覚えた。少してから恐る恐る目を開けてみる。
“ これで色が見えるようになった ”。確かに私はそう確信してた。でも、蓋を開けてみればそんなことは全くなかったんだ。
目の前はモノクロ。美桜さんが言っていたような彩りは一切私の世界には現れていない。
契約したじゃん。お願いを叶えるって言ってくれたじゃん。
それもこれも全部、嘘だったっていうの?
私は自分の気持ちで弄ばれただけだってこと?
___嘘だ。
嘘だ
嘘だ
嘘だ
嘘だ
嘘だ
嘘だ
嘘だ
嘘だ
嘘だ
嘘だ
嘘だ
嘘だ
嘘だ
嘘だ
嘘だ
嘘だ
え……?今、どこから声が聞こえてきたの?堕天使さんはどこにもいないのに……。
長すぎるよ。先にそう言ってくれれば私はこんな大きくなりすぎた期待を背負うことだって、なかったのに……。三年も待てない……。
許すって……そんなこと、出来るわけないじゃん。堕天使さんは私を騙してきたのに……。
そう話す堕天使さんの声色は、どこか儚げで……。さっきより明らかに申し訳なさそうな感じで漂っていた。
___早く色を知りたいな。
【 白黒の世界で桜の少女は叶うことの無い夢を見る 】


この二人にはある共通点がございますので是非感想ついでに考察をしてくれたらめちゃくちゃに嬉しいです🙌












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!