js side
僕がその言葉に返せずにいると、
サンウォンが小さく息を吐いた。
そして
僕の手からスマホを取るわけでもなく、
少しだけ声が届く距離で言った。
˹ ジュンソさん、肉焦げますよ ˼
思わず鉄板を見る。
慌ててトングを動かすと、
ジュウ、と音が鳴った。
その様子を聞いて、
電話の向こうでゴヌが小さく笑う。
「 やっぱり … 一緒にいるんですね 」
その声は
さっきより低くて、消えてしまいそうだった。
『 ゴヌ … 』
ゴヌにはもう関係ないでしょ
そんな冷たい言葉を
かけようとしたときだった。
「 迎えに行きましょうか 」
『 え ? 』
思わず聞き返す。
「 雪降ってるし 」
「 僕とくっついて帰りましょうよ 」
甘えるような、冗談みたいな言い方だったけど、
その声はどこか本気だった。
僕は困って
テーブルを見る。
どう答えるのが正しいのか
分からなかった。
その前で
サンウォンは静かに肉を裏返していた。
『 大丈夫だよ 』
やっとそう言う。
『 サンウォンが、いるから 』
少し迷って、口にした言葉だった。
その瞬間、
鉄板の音だけが店に響く。
電話の向こうで
ゴヌが息を吐く。
「 …… そっか 」
少しの沈黙。
それから
ゴヌが静かに言った。
「 分かりました、 」
「 気をつけて帰ってください 」
ゴヌはさっきの調子とは反対に、
僕に呆れたような、そんな言い方をした。
通話が切れる。
僕は少しの間、スマホを見たままでいた。
gw side
上司に誘われ断れずに着いてきた飲み会の途中、
久しぶりに飲みすぎたな、と思いながら
酔いを覚ますために店を出ると、
冷たい空気が顔に当たった。
頭も身体もふらつく。
「 …飲みすぎたかな 」
そう言いながら
ポケットからスマホを取り出す。
画面が光って、
一番上の名前が目に入る。
【 ジュンソ 】
その名前を見た瞬間、
さっきまで考えてもいなかったのに
頭の中があっという間に埋まった。
ジュンソは今
誰かといるのかな。
何をしてるんだろう。
自分でも
面倒くさいと思う。
「 …… ほんと、重すぎ俺 」
ひとりで小さく笑って、
それでも通話ボタンを押した。
コール音が
雪の降る夜に響く。
数秒後、
電話が繋がった。
『 …もしもし 』
その声を聞いた瞬間、
胸の奥がまた熱くなる。
「 ジュンソ… 」
自分でも分かるくらい
声が掠れていた。
『 どうしたの 』
何を話すかなんて考えてなかったのに、
勝手に口からでた言葉。
「 会いたい 」
スマホを耳に当てる手がかじかんでくる。
「 今から会えませんか 」
少しの沈黙。
電話の向こうで
何か音がする。
鉄板の音。
それから
別の男の声が聞こえた。
˹ ジュンソさん、肉焦げますよ ˼
一瞬、
頭が真っ白になる。
やっぱり、頭の端で考えていたことが現実になる。
雪が落ちてくる空を見上げた。
「 やっぱり … 一緒にいるんですね 」
自分でも驚くくらい
寂しそうな声になった。
『 ゴヌ… 』
その呼び方が
少しだけ優しくて、逆に苦しくなる。
少し可愛く、冗談っぽく言う。
「 迎えに行きましょうか 」
『 え? 』
困った様子のジュンソをよそに、続ける。
「 雪降ってるし 」
「 僕とくっついて帰りましょうよ 」
本当は冗談じゃない。
でも、
そういう言い方しかできなかった。
少しの沈黙。
それから
ジュンソの声が聞こえる。
『 大丈夫だよ 』
胸の奥が
少しだけざわつく。
分かっていたはずだった。
『 サンウォンがいるから 』
その名前を聞いた瞬間、
見上げていた目線を落とす。
雪が
ゆっくり落ちていく。
「 …… そっか 」
数秒、
何も言えなかった。
それから
静かに言う。
「 分かりました 」
少し笑って続ける。
「 気をつけて帰ってください 」
通話を切る。
スマホの画面が
暗くなった。
しばらく
そのまま立っていた。
それから
小さく息を吐く。
「 …… 戻るか 」
そう言いながら
振り返り、また
がやつく店内へと足を進めた。
店の灯りが
すぐ後ろにあった。
でも
気づいた時には
もう店を出ていた。
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どう完結させよう…












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!