エニーカラー本社の休憩ブースは、
思ったより静かだった。
不破くんとの案件配信までまだ少し
時間があるらしく、スタッフの姿もまばら。
コーヒーメーカーの低い音だけが響いていた。
あなたは、紙コップを両手で包み込みながら、
視線をテーブルに落とした。
こんな相談、するつもりじゃなかったのに。
向かいのソファにだらしなく
腰掛けた同僚の不破くんが、
ホットコーヒーを飲みながら笑う。
即答できない時点で、
もう図星みたいなものだ。
“激しく”って言葉に、
自分で勝手に赤くなる。
そんなつもりじゃないのに。
声がどんどん小さくなる。
不破くんが一瞬、目を丸くしてから笑った。
反射的に否定する。胸の奥が熱くなる。
違う、違う。ただ________。
さらっと言われて、ぐっと言葉に詰まる。
自分では隠してるつもりだったのに。
ローレンには絶対知られたくなかった部分。
不破くんは、悪気なく肩をすくめる。
即答だった。そんなこと、
口に出せるわけがない。
想像しただけで、顔が熱くなる。
ローレンは優しい。
私のことを大事にしてくれる。
そんな彼に、“もっと強くしてほしい”なんて。
欲深い女だって思われるかもしれない。
不破くんは、紙コップに
口をつけたままじっとあなたを見た。
首をぶんぶん振る。
ぽつりと本音が落ちる。
可愛い彼女でいたい。
欲張りな女じゃなくて、
守ってあげたくなる存在で。
少なくとも、そう思われていたい。
不破くんが堪えきれずに笑う。
どこか優しいからかい声に、
あなたは唇を尖らせる。
即答だった。そこに迷いはない。
だからこそ、怖い。
本音を見せて嫌われるのが。
相談相手をミスったかもしれない。
そんなことを考えながら、
私は紙コップの中身を一気に飲み干した。
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!