第22話

18.馬鹿な人
1,016
2024/04/18 11:02
あれから何日か経ち、あなたの下の名前は回復し、速やかに漆坂の場所を特定した。
昔のあなた
…森さん、ちょっと行ってくる
森鴎外
…うん、いってらっしゃい。気をつけてね
昔のあなた
うん
薄暗い倉庫。

男と少女が2人。
昔のあなた
…漆坂佳
漆坂佳
おや?お父さんとは呼んでくれないのかい?
昔のあなた
気色悪い
漆坂佳
辛辣
昔のあなた
…貴方の最終的な目的は、私を殺すこと
昔のあなた
そうでしょ?
漆坂佳
…そうだとして、君に何ができるんだい?
あなたの下の名前は護身用に持っていた小刀を取り出し漆坂に向けた。
昔のあなた
何って、今してるでしょ。貴方を殺すの
漆坂佳
その前に私が君を殺すさ
あなたの下の名前の圧勝。

漆坂は壁に追いやられて、尻餅をついた状態で、あなたの下の名前に刃を向けられていた。

紅葉に鍛えられたあなたの下の名前と少し武道を齧った程度の漆坂では分が悪かったようだ。
漆坂佳
ははっ…もう辞めだ。終わりにしよう
漆坂佳
一思いにやってくれ
昔のあなた
…最後に一つ…聞いてもいい?
漆坂佳
構わないよ
昔のあなた
…どうしてお母さんを殺したの?
漆坂佳
…浮気していたんだ。私の大嫌いな奴と
昔のあなた
…ただの勘違いだった
漆坂佳
あぁ、わかった頃にはもう遅かった
昔のあなた
それなのに続けた理由は?
漆坂佳
…私には、一度決めたことは必ずやり遂げるという信念があってね
漆坂佳
…私には責任がある
後に、漆坂はこう語った。
 
浮気の復讐、という目的で愛する人を殺したのに、中途半端で辞めるのはいけないと思った。

愛する人を殺して、元々殺すはずだった命を放ったらかすのでは、彼女が浮かばれないと。

だがこれは自分の中での言い訳に過ぎなかった。

目茶苦茶で、何もわからないまま、ただそのモヤを晴らしたくて、彼は人を殺した。

それでどうにかなるはずがないということを、頭の隅に追いやって。
昔のあなた
…そう
昔のあなた
馬鹿な人だね。私の父親だとは思えない
漆坂佳
…本当に、私は馬鹿なんだ
その言葉を最後に、漆坂は息絶えた。








あなた
(はずだった)
8年後、その殺したはずの男は、櫻木崇人という偽名をもって、あなたの下の名前(詳しくするとその後輩)の前に再び姿を現した。
あなた
あなた
もういいかな面倒臭いし
太宰治
えぇ?
あなた
私の目的は愛川にかかった異能を解くってだけだし
あなた
漆坂は異能がない。つまり、異能力者を雇ったんでしょ?
あなた
なら用があるのは漆坂じゃなくて、その異能力者
太宰治
本当にいいんですか?
そうは言っているが、実際太宰はこうなることを予測して、漆坂の情報というより、彼が雇った異能力者の情報を集めていた。

乱歩も同様だろう。
※現在乱歩不在
あなた
勿論、何もしないわけじゃないよ?ちゃんと伝手がある
ポートマフィアに集めてもらった情報も、有効活用しないと、とあなたの下の名前は呟いた。
太宰治
…伝手、というのは?
あなた
内緒
太宰治
…ところで心中
あなた
本当によく飽きないよね。一人ですればいいのに
太宰治
一人じゃ心中はできませんよ
あなた
…あーあ、昔の太宰は心中の誘いなんてしなかったのに
太宰治
…僕はずっとあなたの下の名前さんの部下でいます
あなた
違うね。昔の太宰はもっと可愛げがあったよ
太宰治
えぇ…
あなた
身長も、私より少し小さいくらいだったのに
太宰治
ふふ、今じゃ私のほうがずっと高いですね
あなた
同じ目線で話してたのが懐かしいな
太宰治
あなた
首痛い
太宰治
次から屈みます
あなた
今の太宰はその分格好いいからいいんだよ
太宰治
……
あなたの下の名前の言葉で一喜一憂する太宰を見て、あなたの下の名前は楽しそうに少し笑った。
亜舞音
コメディは…?
亜舞音
あなたの下の名前さんに従順な太宰さんが可愛い

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