ドン……ドン……
シャン……シャン……
いつの間にか聞こえてきた太鼓と鈴の音色。
玲は仕方ないと考えることを諦め、トンネルの中へと足を進めた。
歩いて__と言っても早歩きだが__10分くらい経っただろうか。
太鼓と鈴の音色は変わらず遠くに聞こえていた。
いや、入口からすれば少し音が大きくなっていた。
玲は焦りを感じながらも、まだ思考ができる余裕はあった。
さらに10分歩き続ける玲。
しかし、一向に向こう側の入口が見えなかった。
ずっと早歩きしていたせいか、段々と息が荒くなってきていた。
それでもまだ思考は続けられるぐらいの余裕はあった。
そして更に10分が経過した。
ドン……!ドン……!
シャン……!シャン……!
いつの間にか、かなりの距離で聞こえてくる鈴と太鼓の音色に、流石の玲も考える余裕は無くなった。
振り返りたい衝動をなんとか抑え、懐中電灯のあかりは前に照らされず腕と同じ動きをし、走る度にバックが背中を打ち付ける。
痛いと感じる余裕もなく、ただただ前に真っ直ぐ走る。
ドン!ドン!
シャン!シャン!
真後ろにいるのでは無いかという錯覚を覚えるほど鈴と太鼓の音が大きくなっていた。
今の玲には振り返って確認するよりも、トンネルを抜ける事に精一杯だった。
どれくらい走ったか分からないが、ようやく外の光が見えてきた。
玲はラストスパートをかけるかのように、全力ダッシュした。
そして……
命からがら鈴と太鼓の音色から逃げ、ようやくトンネルの外へと出ることが出来た。
荷物を持ちながら30分近く早歩き、体感だが10分近く走り続け、最後は全力疾走。
陸上選手であればまだ余裕だったかもしれないが、常人ならば玲の状態が普通かもしれない。
玲は膝に手を付き、少しづつ息を整えた。
考え込んでいると、玲の目の前に男性が立っていた。
ここでも普通なら安堵するだろう。だが玲はこの後のことを知っていた。
故に、冷や汗が止まらなかった。
第二関門は『トンネル先の運転手』
その者は、誰も知らない帰れない場所へと送る死神である……
35話「誘う、『トンネル先の運転手』」













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!