第21話

保健室
412
2021/08/12 10:00


......目を覚ますと、白色の天井が見える。

ガバッと体を起こして回りを見渡す。カーテンが閉めてある。ここは保健室だ。





あれから、泉先輩がただひたすらと暴れまわっていた。兄に向かって。

愛情を確認していたのだろう。
松慎 夏芽まつしん なつめ
あ、黎ちゃん。おはよう...
私の様子を見にきてくれたと思われる松慎くん。

微笑みながら保健室のベッドの横に置いてあった椅子に座って私の方を見る。



なんで私が気を失っていたのかは一切覚えていない
松慎 夏芽まつしん なつめ
ねえ、大丈夫?
僕すっごい今不安なんだけど...
相原 黎あいはら れい
?なんで?
私は大丈夫...だよ...?
なぜか松慎くんは私に向かって心配している。

その理由はわからない。自分でもなにがおかしいのか理解できていないからだ。


松慎くんは私の頬に手を当て、言った。





松慎 夏芽まつしん なつめ
黎ちゃん、泣いてるよ?






思ってもいなかった言葉に、絶句する。

そんなこと気にしてもいなかったが、確かめてみると頬に水が伝っている。





相原 黎あいはら れい
っえ...なん、なんで?
私なんで泣いてるの、?怖い...
松慎 夏芽まつしん なつめ
黎、黎ちゃん。落ち着いて。
ねえ、聞いて。ちゃんと聞いて。
相原 黎あいはら れい
なん、なに...??
松慎 夏芽まつしん なつめ
ほんとは辛いんでしょ?
黎ちゃんの本心は、失恋で辛いんじゃないの?
相原 黎あいはら れい
.........



そう言われても、黙ってしまうのが本心だ。


“ 辛いんじゃないの? ” って言われても私にはわからない。辛いかもしれない。けど辛い、とは思っていない。

どっちかわからない。ほんとに、...。


松慎 夏芽まつしん なつめ
黎ちゃん...??
相原 黎あいはら れい
ごめん、わからない。
辛いのかどうかも、私にはわからない。答えが出てこないの。
松慎 夏芽まつしん なつめ
......そうかもしれないけど、今黎ちゃんは辛いんだと思うよ。
相原 黎あいはら れい
いや、違う。辛くない。
それは松慎くんの勘違いだと思う。
松慎 夏芽まつしん なつめ
じゃあなんで、


















松慎 夏芽まつしん なつめ
...なんでそんなに辛そうに、...泣いてるの?

プリ小説オーディオドラマ