第6話

3 シナリオと違うのだが!?
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2025/11/12 09:00 更新
「師尊。おはようございます。朝食をお持ちしました。」

洛風ルオフォン、ありがとう。ここへ置いてくれ。」

…あ、そういえば、玲憐レイリェンはあまり感謝の言葉を言わないのだったか。

「……ぁ、は、はい!!失礼します。」

洛風ルオフォンも驚いてしまっているじゃないか。失敗したら罰があるんだ…気をつけなければ…
「師尊、1つお願いがありまして。」

「なんだ?」

「今日の弟子たちの修行、見に来ませんか?今1番大事な基礎の構えを教えているのですが、私だけでは見逃している所があるかもしれないんです。なので、師尊直々に弟子へご指導願いたく。弟子たちも、師尊からの指導をご所望でした。」

これは、元のシナリオ通りだ。
霙蘭エイランに構えの指導をしていないから、全くできないところを玲憐レイリェンに見せて幻滅させようという魂胆だったか。

しかし霙蘭エイランは見よう見まねで完璧にこなし、何も言うところがないという展開だった。
同じように無事終わるといいが…
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「今日は師尊自ら指導しに来てくださっている。気を抜かずにしっかりと取り組むように!」
洛風ルオフォンの声を合図に修行がスタートした。
まず私は、近くの椅子に座り弟子たちの修行を見守る。

今日は、霙蘭エイランも参加している。少しおぼつかない気もするが、周りの弟子たちに合わせてしっかりやっているようだ。

無意識に霙蘭エイランのことばかり見ていてしまったようで、ばっちり目が合ってしまった。その時、霙蘭エイランは真剣な顔をしていたのに、ふわりと微笑んできた。

…俺を落とすつもりなのか??そういうのはヒロインにやってくれ!!

洛風ルオフォンは俺の視線の先に気づいていたようで、 霙蘭エイランに対してとても当たりが強い。

林霙蘭リン・エイラン!遅い!周りに合わせろ!」
いや、まったく遅くないがな…むしろみんなよりも速いくらいじゃ…?

まわりの弟子たちは洛風ルオフォン霙蘭エイランを嫌っていることは察しているようで、特に何かを言う様子はない。
「師尊!弟子たちはどうでしょうか?」

「悪くはない。」

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「次は、これまでの修行の成果の確認だ。1人ずつ前に来て基礎の剣技をしてもらう。まずは沈以寧シェン・イーニンから。」

この子は確か、唯一霙蘭エイランの味方をしてくれた子か。表立って助けていたわけではないが、陰で傷の手当てをしてくれたらしく、とても信頼されていたとか。

完璧とまではいかなかったが、弟子入りしたばかりにしてはかなり上出来だ。

…口にはしないがな。

その後何人か終わっていき、次の人の名前が呼ばれた途端、周りの空気が変わった。

"花雪鈴ホワ・シューリン"このストーリーのヒロインであり、霙蘭エイランの恋の相手。
一緒に修練しているときに気になり始め、初任務のときに会話をしてお互い良い関係になっていくというシナリオだった。

そのせいで、洛風ルオフォン雪鈴シューリンのことをすごく気に入っていたから、嫌がらせはヒートアップしたけどな。

雪鈴シューリンの剣技は完璧で、とても華があった。名前にぴったりで、華麗に舞うような軽やかさがあったが、その目は冷たく、雪の上に乗っているようであった。

全員が雪鈴シューリンに注目する中、霙蘭エイランはどこか上の空で、考え事をしているようだった。

霙蘭エイラン!未来のお嫁さんが剣技を披露しているというのになぜ余所見をしているんだ!それに、次は君の番だぞ!?これが主人公の余裕というやつか…?

「最後、林霙蘭リン・エイラン!」

洛風ルオフォンは少しニヤニヤしており、周りの弟子たちはヒソヒソと話している。

"あいつ指導してもらってないけど大丈夫か?"
"また師兄の嫌がらせか…"

そんな声が聞こえてくるが、霙蘭エイランのことだし完璧にこなすだろう。

そう思っていたが、予想外のことが起きた。

剣を構えた霙蘭エイランは腰の重心が浅く、剣先も少し斜めになっており、全く様になってない。
剣を振るが、そのスピードはとても遅く、まるで小学生のお遊びのようだった。振る度によろついて、終いには最後の剣技で思いっきり転けた。

霙蘭エイラン!これまで教えたことがなにもできていないじゃないか!修練をさぼっていたのか?」

「師兄、申し訳ございません。」

床に座り込んだまま洛風ルオフォンに謝罪をしているが、棒読みすぎてなにも敬意が感じられず、洛風ルオフォンは今にも爆発しそうだ。

「師尊……」

座り込んだままこちらの方を向いて言ってきたが…
霙蘭エイラン…その上目遣いはなんだ……
こいつ、まさか自分の顔がいい事を自覚してるのか?

霙蘭エイラン。立ちなさい。戦いで転んでも相手は待ってくれやしない。」

「はい師尊!出来損ないの弟子でごめんなさい…幻滅しましたか…?」

くっっそ顔がいい…!こんな子を虐めることなんて俺にはできない…

しかしシナリオと展開が変わっているから早く戻さなければならない。
…まずは基礎ができるようになるまで指導をして才能を開花させなければ。

「はぁ…霙蘭エイランは出来損ないではない。基礎中の基礎を間違えているだけだ。この後私のとこへ来なさい。」

私の言葉に周りの弟子たちがざわめいたが、一番に反応したのは洛風ルオフォンだった。

「師尊!お待ちください!こんな弟子のためだけに師尊がわざわざお手を煩わせる必要はありません。私がしっかりと指導しておきますので…」

「今日霙蘭エイランができていなかったのは指導の仕方が悪いのではないか?今からどれだけ指導しようと変わらんだろう。洛風ルオフォンは他の弟子たちへの指導へ励め。」

洛風ルオフォンに任せてもしっかり指導する保証がないからな。私がした方が手っ取り早いだろう。
ちらりと霙蘭エイランに目をやると、今までにないほどに満面の笑みを浮かべていた。

…どういうことだ?悪役である俺に直々に指導されるんだぞ?本来なら嫌うだろう。
いや、まさか…俺に指導してもらうためにわざと失敗を…?いやいや、そんなはずは。

「…やはり、他の師兄に指導を…」

「師尊!直々に指導してくださるんですよね!私すごく嬉しいです!よろしくお願いしますっ」

…これ、もう断れないやつだ…



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