『……で?』
昼休み。
机に肘をついたこはくが、にやにやしながらこっちを見ていた。
「何」
『いやぁ? 最近やたら前川くんと仲良いな〜って?』
ぎくっ、と心臓が跳ねる。
「別に普通やけど」
『普通の人は毎日一緒に帰りませーん』
「っ!?」
なんで知ってるの。
『昨日見たし〜?』
こはくがニヤニヤを深める。
『しかもコンビニ寄ってたやろ』
「……ストーカー?」
『親友ですー』
終わった。
わたしは机に突っ伏す。
「いやほんと、そういうんじゃないから」
『へぇ〜?』
絶対信じてない顔。
『前川くん、めっちゃ楽しそうやったけど?』
その言葉に、胸が少しざわつく。
「……そう?」
『うん。てか元々あの人、女子と普通に話すタイプやしね』
こはくがちらっと教室の後ろを見る。
そこには流輝がいた。
『前川くーん!♡』
女子が流輝に話しかけている。
流輝は笑いながら返事していた。
……楽しそう。
『モテるしね〜あの人』
「え?」
思わず聞き返す。
『え、知らんかったん?』
こはくが少し驚いた顔をする。
『普通に人気やで。顔いいし、明るいし、距離近いし』
そうなんだ。
……いや、まぁ分かるけど。
流輝って、人懐っこい。
誰にでも話しかけるし。
笑顔多いし。
しかもあの顔。
そりゃモテるか。
『去年も結構告られてたらしいよ』
「へぇ〜」
なんか。
変な感じ。
胸の奥がもやっとする。
『何その反応』
こはくがニヤリと笑う。
『え、まさか嫉妬しちゃってんの〜?』
「は?違うし!」
反射で否定する。
でもこはくは完全に面白がっていた。
『いやぁ〜、でも分かるよ君。前川くんってああ見えて優しいもんね』
その言葉に、昨日のことを思い出す。
―🐿️「ちゃんと頼れよ」
優しかった。
びっくりするくらい。
「……まぁ、いい人ではあるよね」
ぽつりと呟く。
するとこはくが机をばんっと叩いた。
『はい出ました!!』
「うるさ!」
『あなたの名字あなたの下の名前さん、今“いい人”って言いましたー!』
「いやだから違うって!」
慌てるわたしを見て、こはくはケラケラ笑う。
その時。
🐿️「何騒いどるん」
聞き慣れた声。
「っ」
振り向くと、流輝が立っていた。
『前川くん聞いて! あなたの下の名前がね——』
「言わんといて!!」
わたしは反射的にこはくの口を塞ぐ。
『んぐっ!?』
流輝がきょとんとする。
🐿️「……何の話?」
「なんでもないから!」
即答。
顔熱い。
絶対赤い。
流輝は不思議そうにしながらも、
🐿️「まぁいいけど」
と言って、わたしの机にジュースを置いた。
「え?」
🐿️「これ、新発売らしい」
炭酸ジュース。
🐿️「昨日のお礼したかった」
「……アイスの?」
🐿️「あと前の怪我の手当て」
流輝が少し照れくさそうに笑う。
その瞬間。
『うわぁ〜〜〜〜笑笑』
こはくのニヤけ声。
『青春だぁ〜〜〜〜』
「違うから!!」
教室に私たちの笑い声が広がる。
その中で。
流輝も笑っていた。
その笑顔を見た瞬間。
また少しだけ、胸が苦しくなった。
あと329日。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!