第18話

5月7日
831
2026/06/16 10:00 更新










『……で?』

 



 昼休み。



 

 机に肘をついたこはくが、にやにやしながらこっちを見ていた。

  





「何」



 



『いやぁ? 最近やたら前川くんと仲良いな〜って?』

 




 ぎくっ、と心臓が跳ねる。





 

「別に普通やけど」






『普通の人は毎日一緒に帰りませーん』

 






「っ!?」

 





 なんで知ってるの。

 






『昨日見たし〜?』





 

 こはくがニヤニヤを深める。

 








『しかもコンビニ寄ってたやろ』  






「……ストーカー?」







『親友ですー』

 





 終わった。

 


 わたしは机に突っ伏す。





 

「いやほんと、そういうんじゃないから」






『へぇ〜?』

 




 絶対信じてない顔。

 




『前川くん、めっちゃ楽しそうやったけど?』

 



 その言葉に、胸が少しざわつく。

 





「……そう?」








『うん。てか元々あの人、女子と普通に話すタイプやしね』





 

 こはくがちらっと教室の後ろを見る。

 



 そこには流輝がいた。







 
『前川くーん!♡』





 

 女子が流輝に話しかけている。

  


 流輝は笑いながら返事していた。

 



 ……楽しそう。






 

『モテるしね〜あの人』
   




 

「え?」




 

 思わず聞き返す。
  



 

『え、知らんかったん?』







 

 こはくが少し驚いた顔をする。






 

『普通に人気やで。顔いいし、明るいし、距離近いし』

 






 そうなんだ。



 

 ……いや、まぁ分かるけど。



 

 流輝って、人懐っこい。

 






 誰にでも話しかけるし。
 




 笑顔多いし。

 





 しかもあの顔。

 




 そりゃモテるか。

 







『去年も結構告られてたらしいよ』

 




「へぇ〜」

 





 なんか。

 



 変な感じ。

 




 胸の奥がもやっとする。

 






『何その反応』





 

 こはくがニヤリと笑う。

 











『え、まさか嫉妬しちゃってんの〜?』







「は?違うし!」

 






 反射で否定する。

 




 でもこはくは完全に面白がっていた。







  




『いやぁ〜、でも分かるよ君。前川くんってああ見えて優しいもんね』







 

 その言葉に、昨日のことを思い出す。

 





―🐿️「ちゃんと頼れよ」





 

 優しかった。

 


 びっくりするくらい。

 




「……まぁ、いい人ではあるよね」

 

  




 ぽつりと呟く。

 





 するとこはくが机をばんっと叩いた。
 








 




『はい出ました!!』





「うるさ!」






『あなたの名字あなたの下の名前さん、今“いい人”って言いましたー!』

 




「いやだから違うって!」






 

 慌てるわたしを見て、こはくはケラケラ笑う。

 





 その時。

 







🐿️「何騒いどるん」




 

 聞き慣れた声。

 








「っ」

 





 振り向くと、流輝が立っていた。

 







『前川くん聞いて! あなたの下の名前がね——』








「言わんといて!!」
    






 

 わたしは反射的にこはくの口を塞ぐ。






 

『んぐっ!?』

 






 流輝がきょとんとする。






 

🐿️「……何の話?」







「なんでもないから!」






 

 即答。




 

 顔熱い。

 




 絶対赤い。




 

 流輝は不思議そうにしながらも、






 

🐿️「まぁいいけど」






 

 と言って、わたしの机にジュースを置いた。




 

「え?」






🐿️「これ、新発売らしい」





 

 炭酸ジュース。





 

🐿️「昨日のお礼したかった」







「……アイスの?」






🐿️「あと前の怪我の手当て」






 

 流輝が少し照れくさそうに笑う。



 

 その瞬間。






 

『うわぁ〜〜〜〜笑笑』
 







 こはくのニヤけ声。

  






『青春だぁ〜〜〜〜』








 

「違うから!!」

 






 教室に私たちの笑い声が広がる。






 

 その中で。


 

 流輝も笑っていた。





 

 その笑顔を見た瞬間。




 

 また少しだけ、胸が苦しくなった。








あと329日。

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