死の祝福…悪魔専用技だが、強いから覚えた。
悪魔っていいなぁ。顔いいし、キレイだし。
それに比べて僕は…髪はボサボサ、似合う服も全然ない。
…吸血鬼です。悪魔じゃないよ。
まあ普通の吸血鬼とは違うけど。
聖浄化結界⁉聞いてないって。
まさか、神聖魔法を使えるなんて…
ん?ってことはまさか霊子崩壊も使えちゃったり…?
…ないない!さすがにない!
っていうか体めっちゃ重いわ。ひどーい。
めちゃ強い雷魔法。
みんなこれで大体死ぬでしょ。
聖浄化結界は長くいればいるほど危険だ。
早く結界の中から出たい。
わぉ。まだ生きてた。
包囲か…普通に困る。
…一番恐れていたことをしやがった。
こういう時、ギィがいればいいのにな…なんて思ったりして。
物理攻撃か…好きじゃない。
パン‼
めちゃくめちゃ痛い。肩やられた…
呪い…こういう時に不便なのか。
ん?って言うか魔法使えないから終わりじゃね?
…積んだわ。
っていうか血ほしい。最大100%として、残り10%くらい?
今まではヴェルダナーヴァから貰ってたからな。
ストック残ってたっけ。ヴェルダナーヴァに血をもらいに行くところだったからなぁ。
ストックはアイテムボックスに…って、魔法使えないじゃん。
終わりじゃん。
…吸血鬼は、長時間血をもらわないと、「飢餓霧鐘」というのになる。
簡単に言うと精神が不安定になる。精神が不安定になると、吸血鬼は高確率で暴走する。
そうなると、死ぬまで永遠に戦い続ける。
戻るためには好みの血がいる。僕の好みは自分よりも強い人の血。
だからヴェルダナーヴァの血は好きだった。
さっさと倒してヴェルザードあたりに血貰おう。
で、そんなことを思っている間に包囲された。
…物理攻撃好きじゃないんだけどなぁ。
その全身からは、周囲の魔素を圧倒し、大地すら震わせるほどの殺気が溢れていた。
一瞬。騎士たちの視界からヴェレッドの姿が消えた。
僕には『魔法特化』の『超速行動』の権能がある。
だから、たとえ魔力自体が使えなくても、肉体の強化と連動して思考と肉体の加速はできる。
ドッ! ズギャァン!
騎士たちの腹部に、拳が叩き込まれる。
それは、ただのパンチではない。真祖の吸血鬼の肉体が生み出す、質量と速度の暴力だった。
鎧は飴細工のようにへこみ、騎士たちは城壁に叩きつけられ、塵になった。
血と硝煙が立ち込める王城の廊下で、ヴェレッドは最後の抵抗を試みた魔導騎士団の隊長を、壁ごと打ち砕いた。
彼は立ち上がり、次なる獲物を探すように、赤く輝く瞳を向けた。
…うん。弱いね。どうしたんだろう。
ヴェレッドの全身を、冷たい霧のようなものが包み込み始める。
それは魔力でも、魔法でもない。飢餓。真祖の吸血鬼が、長時間、
高密度の血を摂取しないことによって陥る、精神を浸食する現象。
自分で戻れる可能性は0に近い。
近いって言うか0だ。
……ギィ、来てくれたりする?
…しないだろうな。
ああ、もうホントに、ムカつくわ…
ヴェルダナーヴァを奪って、ルシアも殺して…大っ嫌い。
ヴェレッドは頭を抱え、フラつき、一瞬動きが止まった。
ヴェレッドの瞳が、熱を帯びた狂気の色へと変わる。
口元には、抑えきれない笑みが浮かび上がった。
乾いた笑い声が、静まり返った王城に響き渡る。
その時、王国の宰相と、最後の護衛である強化兵部隊が、奥の扉から現れた。
ドオォン!
ヴェレッドは床を蹴り、強化兵部隊の中に突っ込んだ。
その動きは、先ほどまでの「冷静で精密な超速戦闘」とは違う。
目的のためだけの、無駄を削ぎ落とした、殺戮の乱舞だった。
一人の強化兵の喉笛を、手の甲で叩き割る。
その体勢のまま、後ろにいる二人の頭部を両足で挟み込み、粉砕する。
返り血を浴びても、「不味い」と吐き捨てるように笑い、さらに奥にいる宰相目掛けて、一直線に突き進む。
その時、空間が裂け、真紅の魔素が溢れ出した。
ドォン!
ギィ・クリムゾンが、瓦礫の山の上に降り立つ。
その表情は、普段の冷めた傲岸不遜なものではなく、焦燥と、深い懸念に満ちていた。
ヴェレッドは、破壊の最中に動きを止め、振り返った。
その瞳には、すでに理性の光はない。
まるで邪魔をされた子供のように、口を尖らせる。
その冷酷な声と、狂気に満ちた表情のギャップが、ギィの胸を締め付けた。
ギィは、ヴェレッドの強靭な顎を掴むと、力ずくで動きを封じた。
乱暴なようだが、その手つきは、細心の注意を払ってヴェレッドの肉体を傷つけないよう、配慮されていた。
抵抗するが、ギィの力に、暴走した肉体では敵わない。
ギィは、自身の首筋を鋭い爪で一気に引き裂いた。血が、止めどなく溢れ出す。
そして、ギィはヴェレッドの顔を優しく引き寄せ、その唇を自分の首筋に押し当てた。
ヴェレッドの全身を覆っていた冷たい飢餓の霧鐘が、急速に晴れていく。
暴走状態のヴェレッドは、この血を「唯一無二の最適解」として認識した。
血を吸うにつれ、彼の瞳の狂気が消え、静かな水色に戻っていく。
ヴェレッドは、ギィの首に顔を埋めたまま、力を失って全身の力が抜けた。
ギィはヴェレッドの細い体を抱きとめながら、静かに魔力で傷を塞いだ。
まだ敵が残ってる。
…え?悪魔召喚してる奴がいる。
すっごい度胸。見てみたい。
ザシュッ‼
…自分を召喚した相手殺したよ。
なかなかヤバい奴だ。

















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。