-あなたの名字あなたの下の名前視点-
桜が香る4月。
私は今日から通う高校の前に立っていた。
さすが私立高校。門が広い。
知ってる人が誰もいないところ。
友達なんていなくても1人でなんとなく過ごせるけど、
ぼっちで気まずくなるのは嫌だ。
なんて内心少し不安を覚えながら、
表情は涼しげに微笑を保ったまま姿勢を正して門をくぐる。
今まで軽くいじめられたことはあった。
どうやら私は目立つようだ。
自分のことはあまり好きではないし、
自己肯定感も高くないけど、
客観的に見て、見た目はそこそこ良い方だと思う。
美人ってわけじゃないけど、決して人に不快感を与える見た目ではない。
そこは親に感謝だな。
割り切った(はっきりとした)性格をしているせいか、今までは男友達の方が多かった。
中には陽キャのイケメンから陰キャのオタクまで。
だからこそカースト上位の女子に目をつけられたんだ。
まぁ今日から通うのは女子校だから、男どうこうで女子に目をつけられることはないだろう。
姿勢を崩さず淡々と靴を履き替え、教室に向かい、自分の席を確認して着席する。
無駄な動きはせず、ピアノの楽譜を開く。
しばらくするといきなり声をかけられた。
(数週間後)
隣の席の彼女とはすっかり打ち解けて仲良くなっていた。
ついつい照れ隠しで素っ気なくしてしまう私の態度も、当たり前のように受け入れてくれる彼女に感謝していた。
そこから彼女は15分ほど、推しについて熱弁してくれた。
すとぷり(?)というグループに所属している
歌い手(?)のるぅとくん(?)という人だそうだ。
ネットに疎かった私は頭の中が?でいっぱいになりながらも、情報を整理しながら話を聞いていた。
覚えられる気がしなかったので、
お勧めの動画のリンクを送ってもらうことにした。
私もちょっとワクワクしていた。
なんでも、彼女の推しのるぅとくんは作曲も少し出来るそうだ。
その後、私が
すとぷりに...
ネットに...
あの人に...
どんどんのめり込んでいくことを、
私も彼女もこの時は想像すらしていなかった。
この日を境に、私はTwitterを初め、
ツイキャスをインストールし、
すとぷりを見るようになった。
最初は誰推し!みたいなのは無くて、なんとなーく全員を見ている感じだった。
友達の推しがるぅとくんだから、
自然とるぅとくんところんくんをよく見ていた。
ただ、音楽が好きな私にとって、莉犬くんの歌声は印象深くて、暇さえあれば聞いていた。
あとは...
これが私の...いや、
私たちの全ての"始まり"だった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!