寝起きのイッテツに頼んだのが間違いだったか、と思いながら、私は手を伸ばす。
私が手を伸ばす隣で、イッテツも同時に手を伸ばしたのが、視界の端に映った。
軽く、指が触れる。
一瞬の出来事だった。
私が謝ると、そのまま沈黙が流れる。
何か気に食わないのかな、と私が顔を覗き込むと、
イッテツがその手を、そのまま握った。
思考が止まる。なぜ、どうして、と必死に考えるが、よぎるのは今までウェンやマナ、リトから聞いてきたイッテツと私の話ばかりで、余計混乱してしまう。
握られている。
普通に、自然に。
力は強くないが、離れる気はなさそうだった。
当の本人は、よく見る宇宙の猫のように動かず、ただただ虚空を見ている。何がしたいのか。
さっきまで寝起きだったせいか、ぼーっとしてしまうのかもしれない。
完全に無意識、という事が今証明されてしまった。
そう言うと、イッテツは自分の手を見た。
私の手が握られているその手を見て、イッテツは一瞬でフリーズした。
明らかに理解が遅れている顔をしながら、慌てて手を離す。でも、少し名残惜しそうだった。
イッテツは俯きしばらく唸ると、また顔を上げた。
少し赤くなっている。
理由になっていない気がする。
少し意地悪をする事にした。
もう一回寝る!!!と慌てて逃げていく彼の背中を見て、私は思わず笑ってしまった。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。