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第4話

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2026/02/28 14:02 更新






『刻む針止まったように 君しか見えない』


カフェの休憩室
テレビから聞き覚えのある声が流れてくる。

アナウンサー
「本日のゲストは、M!LKの皆さんです!」

あなたの下の名前は、何気なく顔を上げた。

勇斗
「よろしくお願いします、佐野勇斗です」

あなたの下の名前
「……あ」

一瞬、時間が止まったような感覚。

あなたの下の名前
「え、え……?」

画面の中で笑っているのは、さっきまでカウンター越しに話していたあの人。

共演者
「佐野さん、最近ハマっていることは?」

勇斗
「最近はカフェ巡りですね。落ち着く場所が好きで」

あなたの下の名前
「……カフェ」

心臓がドクン、と跳ねる。

同僚
「あなたの下の名前、どうしたの?テレビそんな真剣に見て」

あなたの下の名前
「え、あ、いや……別に」

同僚
「もしかして佐野勇斗くん好きなの?」

あなたの下の名前
「ち、違うよ!」

否定はしたけれど、目は画面から離れない。

勇斗
「静かなところでコーヒー飲む時間が、一番リセットできるんですよね」

その横顔、その笑い方、その少し照れた仕草。

あなたの下の名前
「……同じだ」

無意識に呟いていた。

同僚
「え?」

あなたの下の名前
「なんでもない」

番組が終わっても、あなたの下の名前はしばらく画面を見つめていた。

その日の営業中。

ドアのベルが鳴るたびに、つい顔を上げてしまう。

あなたの下の名前
「いらっしゃいま――……」

違うお客さんだと分かると、ほんの少しだけ胸が沈む。

あなたの下の名前
「……何期待してるんだろ、私」

夜、帰宅後。

なんとなくテレビをつけると、バラエティ番組にまた勇斗の姿が映る。

勇斗
「いや、それは無理でしょ(笑)」

スタジオの笑い声。

あなたの下の名前
「……楽しそう」

気づけば、ソファに座ったまま画面に釘付けになっている。

あなたの下の名前
「会ったの、一回だけなのに」

なのに。

勇斗が笑うたび、
勇斗が誰かと話すたび、
その視線の先を追ってしまう。

あなたの下の名前
「なんで、こんなに気になるの」

スマホを手に取り、検索欄に「佐野勇斗」と打ち込む。

あなたの下の名前
「……何してるんだろ、私」

写真をスクロールしながら、カフェで見たあの穏やかな表情を思い出す。

勇斗
「ありがとう……あなたの下の名前」

耳元で蘇る声。

あなたの下の名前
「……名前、呼ばれただけなのに」

胸がぎゅっと締めつけられる。

翌日。

またテレビ局の宣伝で勇斗の姿が映る。

ナレーション
「今夜は話題のドラマ特集!」

勇斗
「ぜひ見てください」

あなたの下の名前はキッチンで洗い物をしていた手を止める。

水の音よりも、テレビの音のほうが大きく感じる。

あなたの下の名前
「……見ちゃうよ、そんなの」

無意識だった。

目で追っている自分に気づいても、止められない。

あなたの下の名前
「お客さん、なのに」

でも。

あなたの下の名前
「また、会えたらいいな」

そう思った瞬間、自分の気持ちをはっきり自覚してしまった。

ただの“有名人”じゃない。
ただの“常連さん”でもない。

あなたの下の名前
「……勇斗」

小さく名前を呼ぶ。

その響きが、やけに甘く胸に残った。

まだ始まったばかりの感情。
でも確実に、心はあの人を目で追っていた。

そしてその頃――

勇斗
「……あのカフェ、また行きたいな」

ぽつりと呟いた声は、誰にも聞こえない。

同じ夜空の下、
二人はそれぞれ、無意識のうちに同じことを考えていた。

――また、会いたい。




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