ローグタウンの片隅、薄暗い路地裏。
よれたシャツを着た男が、ニヤニヤと笑いながらペルシェ・ノアを見下ろした。
背後には、同じようなチンピラが2人。どいつもこいつも酒臭い。
ノアはニコリと笑って——
チンピラの足をポン、と軽く触れた。
次の瞬間
ガクンッ!!
チンピラたちは、まるで足の力が抜けたかのように、次々と地面に倒れ込んだ。
しかし、すぐに起き上がることは出来なかった
チンピラたちは、もはやパニックだった。
自分達をこんな目にしたチビを睨もうとするが、その目には——チビ…ノアの姿は赤ちゃんにしか見えていない。
ペルシェ・ノアは悪魔の実の能力者だ。
悪魔の実 超人系【ヨチヨチの実】
体が一生幼い子供の赤ちゃん人間になる能力。
①他者にハイハイを強制する力
②赤ちゃんだと誤認させて敵対心を無くす力
※赤ん坊でも殺すと言う奴には意味が無い
世界一の弱者であり世界一の愛され者になると言われている悪魔の実なのである。
気づけば、3人ともウルウルした目でノアを見つめていた。
ノアは、無表情で呟いた。
その様子を、おんぶ紐で持ち運ばれていたぬいぐるみのロジャーが、ケタケタと笑う。
呆れながらも、ノアはさっさと路地を抜け出した。
目的はただ一つ——船を手に入れる。
時は朝頃に遡る。
ひとりかくれんぼは終了させたが、ぬいぐるみは燃やさずにいた。
だって凄い喋りかけてくるんだもん。
クマのぬいぐるみに何故か降霊術によって憑依した海賊王。
ひとりかくれんぼが未完成だったせいか、記憶が曖昧の癖に口を開けば【海賊】【海】【冒険】!と執拗い。
舌打ちをしたロジャーは、部屋の隅に行き背を屈めて、床を指でグルグルとなぞる拗ねた子供のような状態になった。
そうして私はロジャーに説き伏せられて、ロジャーを連れて海に出ることになったのだ。
ローグタウンの港。
ペルシェ・ノアは慎重に足を進めた。
目の前には、何隻もの船が停泊している。巨大な帆船もあれば、小さな漁船もある。
小声で呟くノアの背中には、おんぶ紐で固定されたクマのぬいぐるみ——ロジャーがいる。
ノアが真剣な表情で船を物色していると、ロジャーが突然喋り出した。
私が海賊や海に出ることを拒否したのは3つほど理由がある。
1つ目は【悪魔の実】
私は悪魔の実の能力者であるため海に落っこちるとそのまま死んでしまう。けれど私の傍には能力者では無いロジャーがいるから何とかなるだろう。ぬいぐるみの癖に力が強いし、いざ敵に絡まれたら背負って逃げてもらったり戦ってもらう。
2つ目は【海軍】
悪魔の実を食べたあの頃から、私も主人公のように海賊になろうと思った。けれど物理的の力はともかく、海軍(特に三大将)と敵対を作りたくない。特に赤犬は無理!!あの人絶対 赤子でも殺す!妊婦狩りとか赤犬は参加してそうで怖い!!
3つ目は【海賊】
大海賊時代と言われていることもあり多くの海賊がいる。麦わら海賊団や赤髪海賊団のように生暖かい海賊は少ないし汚くてゲスの海賊とかいるかもしれない。もしかしたら漫画とアニメとか違う性格で白ひげ海賊団はゲスかもしれないため怯えて海に出ることが出来なかった。
だから私は【冒険家】として名を名乗ることにした。
海軍が補導するのは海賊だけ。ならば冒険家なら大丈夫では無いかと思ったのだ。そんなに甘くはないだろうけど私は身を少しでも守れるよう、そう名乗る。
…ぶっちゃけ政府側が海賊判定したら海賊になってしまうだろうけどさ。
そんなことをブツブツと考えながら、ノアは目についた小舟の前で立ち止まる。
船体は少し汚いが、一応海には出られそうだ。ロープで桟橋に固定されている。
ノアはロープを解き始めた。
その時——
突然、怒鳴り声が響いた。
振り向くと、屈強な男が数人、ノアのほうへ走ってくる。どうやら船の持ち主らしい。
ノアは全力でロープを解き、船に飛び乗った。
勢いよくオールを掴み、必死に水をかく。
ノアは悪びれもせず、ニコッと笑って手を振った。
男たちは港の端で悔しそうに叫び、ノアの小舟はゆっくりと海へと進んでいった。

















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。