あなたside
話が一段落し、自然な流れで一緒に帰ることになった。
心操くんの荷物を取るためにC組の教室まで行き、窓の外を見ると、空はもう赤くなっている
心操「じゃあ 帰ろっか」
あなた「…あ、ちょっと待って。」
あることを思い出し引き止めると、二人は不思議そうな顔をした。
急いでA組に向かい教室を覗くも、轟くんの姿は無い
…出来れば、今日言いたかったんだけどな。
朝日「あなた?帰るよ」
あなた「…うん。すぐ行く」
居ないものは仕方がないので、渋々と帰路につく
こうして三人で帰るのも、何だか久しぶりだ。
けれど言いたいことは先程言い尽くしてしまったので、私達の間には沈黙が流れる
だがこの空間に気まずさは無い。寧ろ、静かなのに気を使わなくていい感じがとても楽だ。
そう思っていたのだが、駅が近付いて来たところでその沈黙を破るように朝日が話し出した
朝日「…雄英も見る目無ぇよな。」
あなた「なに、急に。」
意味が分からず訪ねると、朝日はいつもよりほんの少しだけ暗いトーンで「だってよ、」と言い 足を止めた。
朝日「訓練やら実践やら通して、A組の実力はだいたい分かってきたつもりだけどさ」
朝日「なんでこいつらが入れて、人使がダメなのかなって…どうしても思っちゃうよ。」
…周りを卑下する言い方は好ましくないけれど、その違和感は私も感じてしまっていた。
贔屓目で見てしまっている部分もあると思うが、それでもあの入試方法で実力を推し量られてしまっているのは納得がいかない。
心操「…そっか。」
彼自身も少なからず感じているはずなのに、それ以上何も言わない所は昔から全く変わっていない
彼は個性を馬鹿にされても何も言い返さないし、それを聞いて仕返しに向かう朝日を引きとめようとする始末だ。
けれど、それほどまでに自分の個性をコンプレックスに思う彼を相手に、私も朝日も強く言うことができない
私たちの間に気まずい空気が流れる。
先程まで心地よかった沈黙が、今はとても不快に思えて仕方がない
朝日が不服そうな顔をし歩き出そうとすると、今度は心操くんが口を開いた。
心操「…でも、体育祭のリザルトによってはヒーロー科の編入も考えてくれるらしいんだ。」
その言葉に、朝日の肩がぴくりと跳ねる
心操「だから、結果出してヒーロー科入って…」
心操「そんで絶対、二人のことも守れるヒーローになるから。」
そう言う彼の目は真っ直ぐに朝日と私を捕らえ、その気持ちが本気だということを証明している。
朝日「…は!そんなん俺もだし!!」
嬉しさを隠しきれない、若干のニヤけが残る顔でこちらを振り返る
こんな所で意地を張る兄は、やはり子供だ。
素直に喜べばいいのに…本当に大人気ない。
でも、
あなた「…私もだし。」
こう返したくなってしまう私も、子供だ。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!