第3話

夜道を追いかけて。
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2026/05/25 11:48 更新
大森 元貴
大森 元貴
じゃあ
それだけ言って、大森は踵を返した。

もうこれ以上、この場にいる理由はない。

そういう切り方だった。

その背中を見て、ルシェルは一瞬だけ固まる。

次の瞬間。
ルシェル
ルシェル
ちょいちょいちょい!

軽い声が夜に跳ねた。
ルシェル
ルシェル
待っておくれよ元貴君
ダンボールの中から、ひょいと小さな影が飛び出す。

着地は少し不器用で、土の上に軽く爪が鳴った。

ルシェルはそのまま駆け出す。
ルシェル
ルシェル
待ってってば!
声は追いかけるみたいに、夜道を転がっていく。


大森の足が止まる。


ゆっくりと振り返ると、

そこには猫が一生懸命走っていた。


ルシェルは息を弾ませながら、
 
それでも目だけはまっすぐだった。
ルシェル
ルシェル
まだ、何も聞いてないんだけど
夜の静けさの中で、

その声だけが少しだけ生きているみたいだった。
大森 元貴
大森 元貴
何を聞くの
大森の声は低かった。
大森 元貴
大森 元貴
聞いたってどうせ何にもならないだろ
吐き捨てるような言葉だった。


ルシェルはその場で止まる。

一瞬だけ、言葉を選ぶみたいに目を伏せて。

それから、まっすぐに言った。
ルシェル
ルシェル
そんなことは絶対にない
ルシェル
ルシェル
君はいじめを受けてるのに、
ルシェル
ルシェル
それでもここにいるじゃないか
その言葉に、大森の足がわずかに止まる。

けれど表情は変わらない。
大森 元貴
大森 元貴
だったら消えてやるよ
空気が一瞬だけ、薄くなる。

夜の音が遠のいたみたいに感じる。


ルシェルは、ほんの小さく鳴いた。
ルシェル
ルシェル
にゃ………
耳が、少しだけ下がる。

いつもの軽さが消えていた。


そして静かに、言葉を落とす。
ルシェル
ルシェル
小さな希望を……捨てないでほしい
その声は説得でも命令でもなくて、

ただ“お願い”だけだった。
……うわぁぁぁあ

※この物語はフィクションです。

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