それだけ言って、大森は踵を返した。
もうこれ以上、この場にいる理由はない。
そういう切り方だった。
その背中を見て、ルシェルは一瞬だけ固まる。
次の瞬間。
軽い声が夜に跳ねた。
ダンボールの中から、ひょいと小さな影が飛び出す。
着地は少し不器用で、土の上に軽く爪が鳴った。
ルシェルはそのまま駆け出す。
声は追いかけるみたいに、夜道を転がっていく。
大森の足が止まる。
ゆっくりと振り返ると、
そこには猫が一生懸命走っていた。
ルシェルは息を弾ませながら、
それでも目だけはまっすぐだった。
夜の静けさの中で、
その声だけが少しだけ生きているみたいだった。
大森の声は低かった。
吐き捨てるような言葉だった。
ルシェルはその場で止まる。
一瞬だけ、言葉を選ぶみたいに目を伏せて。
それから、まっすぐに言った。
その言葉に、大森の足がわずかに止まる。
けれど表情は変わらない。
空気が一瞬だけ、薄くなる。
夜の音が遠のいたみたいに感じる。
ルシェルは、ほんの小さく鳴いた。
耳が、少しだけ下がる。
いつもの軽さが消えていた。
そして静かに、言葉を落とす。
その声は説得でも命令でもなくて、
ただ“お願い”だけだった。
……うわぁぁぁあ
※この物語はフィクションです。













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。