【第二十六話:母への願い】
静かな夜、孝宏はリビングで母親と向き合っていた。
母親の目はどこか虚ろで、疲れた表情が彼の胸を締め付けた。
部活で鍛えた手には小さな震えがあり、息を整えながら彼は意を決して言葉を口にした。
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【静かな決意】
孝宏:「母さん…」
突然の呼びかけに、母親が顔を上げる。
孝宏は、かすかに笑みを浮かべたが、どこか不安げだった。
母親:「何かあったの?」
母親の声は思いのほか冷たく、孝宏の胸が少し痛んだ。それでも彼は、その先の言葉を絞り出した。
孝宏:「俺、サッカーのキャプテンをしてるんだ。」
母親は少し驚いたように目を見開いたが、すぐに無表情に戻った。
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【願い】
孝宏は、母親の手をそっと握った。
孝宏:「俺、頑張ってるんだよ。父さんみたいに…少しでも母さんに笑ってほしくて。」
母親の手は冷たく、長い間握られていない感覚に戸惑うような仕草を見せた。
孝宏:「だからさ…俺の試合、観に来てほしいんだ。」
その言葉に、母親は静かに顔を伏せた。
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【沈黙の中で】
リビングには、冷たい沈黙が広がった。
孝宏は耐えきれないほどの緊張感に押しつぶされそうだったが、母親の返事をじっと待った。
やがて、母親がぽつりと口を開いた。
母親:「…私が行ったところで、何になるの?」
その問いかけに、孝宏はすぐに答えた。
孝宏:「俺の頑張りを見てほしい。それだけでいいんだ。」
母親は孝宏を見つめ、どこか申し訳なさそうな表情を浮かべた。
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【母の葛藤】
母親は、震える声で呟いた。
母親:「孝宏…私は、あなたの母親として失格だよ。何もしてあげられないし、ただ迷惑をかけるだけで…」
孝宏は母親の手をぎゅっと握りしめた。
孝宏:「そんなことない。俺は母さんがいるから、ここまでやってこれたんだ。だから、俺の試合を見てくれるだけで十分だよ。」
母親は涙をこぼしながら、黙って頷いた。
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【その夜】
孝宏は、自分の部屋に戻ると布団に倒れ込んだ。
母親に試合を見に来てほしいと伝えたことで、心が少し軽くなったように感じた。
翌日、彼はいつも通り学校に行き、潤に試合の話をした。
潤:「お母さん、来てくれるといいですね。」
孝宏は軽く笑ってみせたが、どこか不安な様子を隠しきれなかった。
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【試合の日へ向けて】
試合の日が近づく中、孝宏は一心不乱に練習に励んだ。
母親が本当に来てくれるのかどうかはわからないが、彼の心には少しだけ希望が灯っていた。
(続く)












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。