『はーい』
インターホンの画面に映ったあなたがいつもより
落ち着きがないように見えて思わず顔が綻ぶ。
「えっと、、あなたです、笑」
『知ってるよ笑いま開けるね〜』
ガチャ
『いらっしゃいませお嬢様』
「え、あ、おじゃましますご主人様、?」
面白く、でも少しだけ格好つけてそう言うと、驚いた
のか自分でも理解できていない様子で変な返しをして
きた。
『かわいいね』
「どこが笑」
『今の返しとか今日の服装とか全部』
「、、あっそ」
あなたは俺にべた褒めされると必ず冷たい言葉を放つけれど、それが照れ隠しということはバレバレで。
本当は嬉しいくせに、素直に喜ばないところがツンデレかわいいので、ついつい苛めたくなってしまう。
『顔赤いね笑』
「っうるさい!!そういうことは言わなくていいの!
"ぽかぽか"という効果音が聞こえてきそうなくらいの
弱い力で俺の胸を叩くあなた。あまりの愛おしさに
噛みつきたい衝動に襲われる。
『ねぇ、あなた』
「ん?」
『優しくするから鎖骨ら辺噛んでもいい??』
「はっ!?何言ってるの!?」
『俺たち付き合ってるんだし、、だめ?』
あなたを堕とすために計算しつくした角度で首を傾げて上目遣いをしてみる。
「、、だめ!!」
『え〜まじか、、』
「今日はだめ、、」
『"今日は"ってどういうこと、?』
あなたがわざわざ付け加えた"今日は"という言葉が
引っかかった。今日は駄目だけど次はいいよ、という
意味なのだろうか。どういう意図で言ったのか気になったので聞き返すと、あなたは恥ずかしそうに俯いて消えそうな声で呟いた。
「今日は緊張してるから、、はじめての彼氏の家だし
変な気持ちになっちゃいそうで、、」
『っ、、それが理由なの、?』
「うん、、」
『なにそれ可愛すぎるんだけど』
叫びたい気持ちを抑えながらあなたを腕の中に閉じ込める。すると抵抗するようにあなたが身を捩りだした。
「ね、近いよ、、離して」
『前もしたじゃん』
「それとこれとは話が違いますぅ」
『はやく慣れて』
「っ慣れないよこんなの、、甘すぎる」
『普通だよ?付き合ってるんだから』
実は今日、両親が仕事で遅くなるから夜遅くまで二人でいられるのだ。あなたには言ってないけど。
そんなことを考えているとポケットに入っていたスマホが震えた。さっきまで会話していたから三人のグループからの通知だとすぐにわかった。だがあなたを
目の前にして返信するわけにもいかず気づかないふりをしてやり過ごす。
「、、見なくていいの、?」
『うん』
「でもめっちゃ鳴ってるよ、?」
『大丈夫』
鳴り止まない通知音に心配そうに顔を覗き込んでくる
あなた。
「ねぇ瑛宜、隠し事してない?」
『してないよ』
「じゃあ何で頑なに見ようとしないの?」
『今はあなたとの時間大事にしたいから』
その気持ちに嘘はない。けれど返す言葉としてはあまりに嘘くさい。さすがのあなたも今回ばかりは怪しいと思ったのか、照れることなく眉をひそめて俺の腕を掴んだ。
「みて、今ここで」
『、、なんで?見んでいいって言ってるやん』
「やだ」
『浮気とかじゃないから大丈夫だよ』
「じゃあ証明してよ。やましいことないなら見せれる
よね?」
珍しく怒っているあなたに思わず身がすくむ。これ以上隠しておくことはできないと悟り、大人しく画面を開いた。
「みせて」
『みせるけど、最初に約束して』
「なに?」
『これ見ても絶対引かんって』
「どういうこと、?」
『いいから』
俺が小指を立てると、あなたは不思議そうに指を引っ掛けた。そのまま何度か揺り動かして、ゆっくりと
指を離すと、俺は目を閉じてあなたにスマホを差し出した。
「、、なにこれ、、私の写真いっぱいじゃん、、」
『うん、、』
「瑛宜に見られたくない写真ばっかりだし」
『うん』
「恥ずかしいんだけど!!」
『、、ごめん』
「しかも♢♢と△△と楽しそうだし」
『え?』
「私のいないところで二人と仲良くしてるのむかつく
あなたは口を尖らせながら画面をスクロールする。
俺はその様子を眺めながら隣に腰を下ろした。
『、、引かないの、?』
「なにが?」
『だってあなたの隠し撮り勝手に保存したりとか、
気持ち悪いことも言ってるし、、』
「確かにいい気はしないけど、、でも、私のこと好き
だからそうなっちゃうんでしょ?笑」
『はい、、お恥ずかしながら、、』
「、、じゃあいい。許す」
『あ〜もう、、ほんと好き』
顔を赤らめながらそう言うあなたに俺は堪らなくなって彼女の首元に顔を埋めた。
「ねぇくすぐったいよ笑」
『なんでそんなに優しくてかわいいの』
「ん〜好きだから、?笑」
『やばいほんと好き』
語彙力が皆無になるくらいに好きという気持ちが溢れだす。この空間にあなたが存在しているだけでも色々やばいのに、この距離の近さであなたの匂いを嗅ぐと変な気分になって頭がくらくらする。しばらく動けずにいると、あなたが口を開いた。
「今日は余裕ないんだね笑」
『うん、笑今日はかっこつけるのやめた』
「瑛宜って意外と甘えん坊だよね笑」
『あなたには甘えたくなる』
「っ私だけ、?」
『もちろんあなただけだよ』
そう言うとあなたは満足そうに笑って俺の頭を撫でてきた。俺はその手を掴んでゆっくりと押し倒す。
「、、かっこつけないんじゃなかったの」
『かっこつけるのやめるっていうのをやめる』
「なにそれ笑」
来た時とは打って変わって余裕そうに俺を見上げるあなたにグッと顔を近づけて唇に触れる。少しして顔を離すと熱っぽい目で俺を見つめてきた。
『っ、、今日夜まで親いないんだけどさ、続きしても
いい、?』
「優しくしてくれる?」
『最善は尽くす』
「、、怪しい笑けどいいや。今日また一つ瑛宜のこと
知れたし」
____好きにしていいよ
俺の耳元で囁くあなたに残っていた理性を持っていかれて、俺たちは時間が迫るまで愛し合った。
行為が終わった後、あなたの身体を支えながら家まで送り届けて、再び自分の部屋に戻ってきた。する前までは優しくしようと思っていたのに、いざあなたの淫らな顔と綺麗な身体を前にすると欲望に抗えなくなって激しくしてしまった。思い返しながら罪悪感に駆られていると、スマホが震え出した。
まさかのあなたからの電話だったので急いで応答の
ボタンを押す。
「、、もしもし瑛宜、?」
『どうしたの、?』
いつもより少し高い声で話すあなたに心臓が跳ねたが、冷静を装って話を振る。
「今日はありがとうって改めて伝えたくて電話しちゃ
った、笑」
『、、嬉しい笑こちらこそありがとう』
「今日幸せだった。瑛宜がおかしくなるぐらい私の
ことめっちゃ好きってわかったから」
『はずい笑』
「重いのも瑛宜なら悪くないなって思ったよ笑」
『、、でも反省してる。あなたに隠れて写真入手して
たこと』
「あれね笑ほんとにびっくりした笑笑」
『ごめんね。♢♢がめっちゃいい写真くれるから保存
しないとか無理だった』
「、、これからはもうそういうことしないでね?」
『はい、、諦めます』
「あの二人からじゃなくて私があげるから」
『え』
「私から瑛宜に渡すから」
「だからあの二人からコソコソ貰うのはおしまいね」
『いいの、?』
「好きだからいいよ」
頭の中でその五文字を何度も繰り返し再生させる。
今まで色んな女の子から同じ言葉を聞いても何も感じなかったのに、あなたからは何度言われても毎回胸が高鳴る。それはお互いがお互いのことを好きだからか、と改めて実感させられた。
『俺、幸せ者だな』
無意識のうちに口から出た言葉をあなたは聞き逃さなかったようで、小さく笑い声が聞こえる。
『ねぇ!笑今笑ったでしょ笑』
「ごめん笑好きだなぁって思って」
『顔見たい』
「なんでよ笑」
『絶対かわいい顔してるから』
「やだ」
『はやく会いたい』
「もう?笑」
『あなたは?』
「、、私も会いたい、笑」
甘い会話にくすぐったくなっていると家のドアが開く音がした。どうやら今日はここまでらしい。
『ごめんあなた、お母さんかお父さん帰ってきたから切るね』
「うん、、」
寂しそうに返事をするあなたに胸が痛みながらも、
安心するような言葉をかける。
『また学校で会えるから』
「わかってる」
『デートも沢山しよ』
「うん」
『人の目とか気にせずにずっと一緒にいよう?』
「うん」
『あなたは俺の自慢の彼女だから』
「うん」
『じゃあね、おやすみ』
「おやすみ」
『あなた』
「ん?」
____愛してるよ
精一杯、気持ちを込めて電話を切った。
俺の真っ直ぐな想いがあなたに届くように。
~直球・after that…~
fin.












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。