第6話

Ⅵ .
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2026/07/19 05:43 更新
秋になり、学校全体が文化祭の準備で慌ただしくなっていた。もてていた俺は、クラスの出し物で朝から休む間もなく働かされていた。廊下ですれ違うみっちーも、クラスの準備で忙しそうに段ボールを抱えている。周りの目があるから、恋人らしい素振りなんて一切見せられない。

​「高橋くん、お疲れ様です」

「おぅ、道枝。それ、重そうやな」

「大丈夫です。これくらい、一人で運べますから」

すれ違いざま、視線がほんの一瞬だけ重なる。それだけで、胸の奥がキュッと締め付けられた。

​夕方になり、一般公開の一日目が終わって、校内は後片付けの静けさに包まれていた。疲れた体を癒やすために、俺は生徒があまり通らない旧校舎へと続く渡り廊下へ向かった。そこに、先客がいた。夕日に照らされた窓辺で、みっちーが一人、外の景色を眺めていた。

​「みっちー」

「……あ、恭平くん」

誰もいないのを確認して、あいつは少し甘えたような声を出す。

「ほら、これ。差し入れ」

手渡したのは、またしても炭酸のソーダをつける前に、一瞬だけ躊躇うような仕草を見せた。

「……また炭酸強そうって思っとるやろ」

「あはは、バレました? でも、恭平くんが買ってくれたやつだから、ゆっくり飲みます」

みっちーはそう言って、微かに眉をひそめながらも、ソーダを口に運んだ。

​「なぁ、みっちー。文化祭の準備、無理しすぎんなよ。お前、さっきからちょっと顔色白いし」

「大丈夫ですよ。恭平くんに会えたから、もう元気です。僕、こうして恭平くんと、同じ学校の空気を吸えているだけで、本当に幸せなんです。……毎日、明日が来るのが楽しみだなって、初めて思えたから」

俺は誰もいない渡り廊下で、みっちーの手をそっと握りしめた。あいつの手は、やっぱり少し冷たかったけれど、握り返してくる力は、何よりも温かかった。

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