完結
「残心の道標」

- ノート
- 君と出会えた奇跡
夕暮れの差し込む弓道場に、心地よい静寂が戻ってくる。夏のインターハイ予選。すべてを懸けた彼の最後の大会が、いま幕を閉じた。誰もいなくなった射位に1人佇み、彼は矢を番えずに弓を引き絞る。張り詰めた空気の中、脳裏に蘇るのは、泥臭くも愛おしい3年間の記憶だった――。凛とした美しさに憧れて門を叩いたあの日。ひたすら巻き藁に向き合った、孤独で地道な基礎練習。初めて的を射抜き、道場に響き渡った乾いた弦音の歓喜。実力、結果、周囲からの期待。最高学年の重圧から引き金を引く手が震え、的を見失ったスランプの暗闇。自分を暗闇から救い出してくれたのは、いつだって共に弓を構え、競い合ってきた仲間たちの存在だった。放たれた矢が描いた軌跡と、射終えた後もなお右手に残る残心の温もり。結果の先にある確かな充足感を胸に、少年は相棒だった弓を静かに収める。無人の道場に響く、最後の一礼。一本の矢に全てを注いだ青春の軌跡と、その先にある未来への一歩を描く、爽快で切ない部活文学。
チャプター
全1話
2,648文字
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