第26話

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2026/02/21 03:00 更新


流れで見に行ったライブに出演していたさつきって人。
そのイベントにはさつきくん以外にも何人かの出演者が居たけど、特に何も感じなかった。
まぁ最後までステージを見きったんだけど。

そして終演後、流れで俺達も打ち上げに参加させてもらう事になった。
広い居酒屋のテーブル3つ分を占領し、出演者もお客さんも裏方の人もごちゃ混ぜ。
どの席もみんな盛り上がってて、凄く楽しそう。

俺らの席も例外ではなく、騒がしかった。
主にこたって人と得体の知れない刺青だらけのおじさんが。

ビール何回一気してるのか分かんないし、ずっとさつきくんを褒めちぎったり、自慢したりし続けている。

そんな目の前の光景を見て、自然と笑顔になってしまっていた。

何だか懐かしい。
俺にも昔、こんな時期があった。
まだ学生の頃や、ちゃんとクリーンな活動をさせてもらってた頃は、こうやって友達やメンバーみんなとはしゃいで、散々バカやってた。

「みなちゃん、唐揚げ食べる?」

「うん、食べるぅ」

ずっと俺の隣に居て、俺の面倒を見てくれてる涼雅。
その横顔を盗み見ていたら、向かい側に座っているこたって人に絡まれてケラケラ笑っていた。

そして反対側の俺の席の隣には、さつきくんって人。
まさか隣に来るとは思わなかった。
話してみたいけど、話題も浮かばないし。

ちょこちょこ向こうから話しかけてきてくれてはいるんだけど、上手く返せないし。

そもそも隣に居る彼氏さんと仲良さそうに話してるから、あんま入り込める隙間も無さそう。

もっと色々知りたいなぁ…なんて。
何でこんな事を思ったのか分からないけど、久しぶりに人に対して興味を持ってしまっていた。

何となくステージ上に居た彼と、今の彼を重ね合わせてみたり。
ぼんやりとさつきくんを見つめていたら、不意に彼がこちらを向いた。

「みなとくんと涼雅くんも行くでしょ?!」

「…え?」

いきなり言われた言葉の意味がよく分からなくて、固まってしまった。

「え?何?」

涼雅も首を傾げながら聞き返している。

「カラオケー!!」

「行くー!!」

その時、俺達じゃなくてこたって人が大声を出して手を上げた。

「よし、みんなで行こ!ね!きよちゃんも!」

「え?俺も?!」

「何か用事ある?」

「いや、無いけど…」

「じゃあ決定だね!!」

さつきくんとこたくんがもはや強制的に全員の参加を決めてしまった。
でも全然嫌じゃない。
むしろ楽しいから構わない。

それにまたさつきくんの歌を聴けるのだと思ったら、行く選択肢しかない。

「みなちゃん、大丈夫…?」

「うん!」

涼雅は俺が涼雅以外と話さないのを知ってるからか、心配してくれてるけど、俺は笑顔で頷いた。

それに俺だって話したくない訳でも、本来話せない訳でも無いはずや。
ただ、人見知りなだけ。

「ねぇねぇ、みなとくんって学生さん?」

「いや…」

いきなりさつきくんに話しかけられて、少し素っ気ない反応をしてしまった。

「同じ歳くらいかなって思ったから…じゃあ社会人だ!」

「うん、まぁ…」

俺とは違う、凄く優しくて愛らしい笑顔。
向けられた綺麗な笑顔が眩し過ぎて、視線を逸らした時、後ろから涼雅に肩を引き寄せられた。

「みなとは俺専属の専業主婦だよ、ね?」

そう言って俺の顔を覗き込む涼雅。
マジで好きって気持ちが溢れ出しちゃって頷いた。

ご飯を作ってくれるのも、家事をしてくれるのも涼雅だし、どっちかというと涼雅の方が主婦っぽいんだけどね。

「あー!!イチャイチャしてるー!!ねぇねぇきよくん!僕らも負けてらんないよ!!」

「ちょ、訳分からへん…やめ、酔うから!!」

いきなり騒ぎ出したこたくんは、きよくんに抱き着いてめちゃくちゃに揺さぶっていた。

何だかんだこの2人も凄く仲が良さそう。
きよくんはツンツンしてる感じだけど、本当はこたくんの事好きなんだろうなぁ…

そんな事を思っていると、いきなり刺青の人が立ち上がってまたビールを一気に飲み干した。

「くぅーっ!!俺も可愛い彼女が欲し〜!!」

ビールを飲み干した直後、そんな事を嘆き出した刺青だらけの人に他の席からも歓声が巻き起こる。

「もー!店長飲み過ぎだよぉー!!」

「さつきくんも乾杯しよ!乾杯!!」

「あーダメ、俺の彼女に俺の許可無く飲ませないで」

「硬い事言うなよぉ〜って、兄ちゃんめっちゃイケメンじゃん…乾杯しよ!」

この刺青の人もけーさんも一見怖そうなのに、そんな会話を交わしてケラケラ笑っている。
その横では相変わらずこたくんに羽交い締めにされたきよくんが喚き散らかして、さつきくんに助けを求めてるし。

めちゃくちゃカオスなんだけど…
何か、凄く幸せな空間。
楽しい。

目の前で繰り広げられるコントの様な光景を見て、俺はただただ笑っていた。


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