バイオリンの音を辿って行って、着いた場所は暗い路地裏。見た感じ、誰も…。
奥に積んである木箱の一番上に誰かがいる。
とりあえず、大声でソイツに話しかけてみた。
アタシの声に気付いたのかバイオリンを弾くのをやめて木箱から降り、こちらに近づいてくる。
その時、アタシは呆然とした。
なぜなら、ソイツは…"虫の姿"をしていたからだ。
虫と言ったが普通の虫とは明らかに違った。
二足歩行で歩いているし、黒と緑を基調にした燕尾服を着ているし、なんならその燕尾服に合わせたシルクハットも被っている。
その虫がこちらにニコニコ笑いながら、やって来たので反射的にプロレス技の一つ"チョークスリーパー"をその虫に喰らわせた。
虫はバシバシ、とアタシの腕を叩きながら叫ぶ。
アタシは、虫の喉元を締めながら声を荒げる。
虫の悲痛な叫び声が、真っ暗な空に響き渡った。
あれから、数分後。
疲れたんで、とりあえず虫をそこらへんにあった縄で縛ってこう尋ねてみた。
虫はゼェゼェ、とキツそうな息遣いをしながら答えた。
ハーネマー?
そんな国って、あったっけか?
確かに、ヨーロッパとかにはありそうだが…
アタシが考えている時、あの喋る虫の視線を感じた。
アタシは、虫を思いっ切り睨みながら言い放った。
虫…ムシタローはう~ん、と唸っている。
しかし、すぐに何かを思い出した様に触角がピンッと立った。
とんだキラキラネームに若干引きながら、ムシタローに二度聞きする。
パーティー!?このロリータ女、パーティー行けんの!?
ムシタローは下を向いて、ボソリと何かを呟いた。
しかし、その動作をなかった様にこちらを向いてニコリと笑った。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!