ドアを開ける
ぎい、と軌む音がやけに大きく響いた
外の空気が、肌に刺さる
冷たいはずなのに一一何も感じない
裸足のまま、ペたり、と足音が残る
見下ろすと、赤い跡
自分の足から続いている
小さく呟いて、また歩き出す
通りすがりの女が声をかける
その視線が、少年の顔に触れた瞬間
喉の奥から、情けない声が漏れる
後ずさる
女は鍾を返して、迷げるように去っていった
足音が遠ざかる
小さく笑う
今度は男が近づいてくる
恐る恐る、といった足取り
少年が顔を向ける
ギザギザの歯が、覗く
男の顔が引きつる
言葉を言い切る前に
同じ声
同じ反応
そして同じように、逃げていく
肩が揺れる
空を見上げる
ー人、また一人
視線を向けては、逸らし
関わろうとしては、やめていく
誰も近づかない
誰も手を差し伸べない
ぼつりと咳く
すぐに、自分で笑う
静かな夜道
足音だけが響く
そのとき
低い声が、落ちた
びたり、と足が止まる
振り返る
そこにいたのは一一
闇のような存在感をまとった男
オール·フォー·ワン
男はゆっくりと歩み寄る
わずかにロ元が緩む
少年は、じっと見つめる
かすれた声で問う
即答だった
一歩、距離が縮まる
男の視線が、少年の牙と爪に向く
少年の目が、わずかに見開かれる
初めての言葉だった
くく、と喉が鳴る
男は淡々と言う
男が、ゆっくりと手を差し出す
静かな声
しかし、拒否を想定していない響き
夜風が吹く
少年の髪が揺れる
小さく繰り返す
少しの沈黙
そして一一
迷いは、なかった
一歩、近づく
差し出された手を見る
そして、そのままーー
掴む
男の口元が、わずかに歪む
その一言で、少年の未来は決まった













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!