第19話

Ten.
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2022/03/11 11:30



鬱陶しいなぁ、みんな.



テンのこと好きならもっと貢いでよ.



テンのビジュアルにつりあわないよそんな値段.



もっと貢いで、評価して、上にあげて.



テンを満足させられたら、抱いてあげるから.
























《 ね、ねぇてんくん 》



『 なあに?? 』



《 その、今回のCDって… 》



『 前回の2倍は買ってほしいなぁ 』



《 にっ、2倍…!? 》



『 なに、テンのこと嫌いなの? 』



《 ち、がうけど、前回…わ、私どれだけっ、 》



『 うるさいなぁ 』







ちゅ_







『 これより甘いの、欲しいでしょ? 』



《 ぇ、う、… わかった、頑張るね、…… 》





『 期待してる、だいすきだよ 』











多分次は無理かなぁ



貢いでくれるならなんでもいいんだけど、



流石にこの子はもう買えなさそう.



そうなると満足感が足りないから…





『 ぉ、この子強おたじゃ〜ん 』



『 よし、次はこの子に決めた! 』














テンが気にいる額までグッズとかCD買ってくれたら



その子を抱いてあげる.



これはテンが自分で決めたこと.



別にCD一枚だけ買う子とかがどうこうって



わけじゃなくて、別にちゃんとファンとして見てるよ.



だけど、もっと買ってくれたらって話.



ボーナスみたいな感じ.



最初は色んな所から批判されたけど



不思議なことに売り上げは右肩上がり.



ね?? ほら、数字は嘘をつかないでしょ?笑



みんなテンが好きだから買ってるの.



テンに認知して欲しいの.



テンのお気に入りになりたいの.



だからどんな方法だろうと稼いでテンに貢ぐの.



それで、大好きなテンに抱かれるの.



テンはたくさん儲かって、ファンは



テンに抱いてもらえる.



Win-Winってやつじゃない??





だからこれをやめるつもりなんてない.





















『 あなたちゃん、っていうんだ 』



「 はい、 」



『 かわいーね 』



「 ありがとうございます、/ 」



実物も可愛いし、当たりだなぁ今回も.



「 あの、なんで私を…? 」



『 なんか目に止まっちゃったから 』



1番額が大きかったし.



「 その、ネットで回ってたんですけど… 」



『 ん? 』



「 お願い事叶えてくれるって本当ですか、? 」



『 うん、ほんとだよ 』





お願い事叶えてくれる、って回ってるんだ



ちょっと優しい言い方になってる笑



この子純粋そうだから楽しめるといいなぁ







『 何して欲しい? 』



「 ………は、ぐ………握手、してください、」



『 ふふ、かわい ハグがいーんだ 』



久しぶりにこんな子に当たったな



絶対離さないとこ、かわいいし



































『 怖くない? 大丈夫? 』



「 …ぇ、て、んさんってこんな事

  ファンとしてるんですか、? 」



『 んーん、…あなたちゃんだけ特別 』



「 え、それって…ん、っ 」



『 …大人しくテンに抱かれてて? 』



















「 …すき、 」



乱れたベットに呟かれたあなたちゃんの2文字は



聞こえないふりをして浴室のドアを開けた.




















あの夜から数ヶ月.



あなたちゃんとはたまに会ってる.



テンが呼ぶ時がほとんどだけど



たまにあなたちゃんから会いたいって連絡が来る.








『 久しぶり〜 』



「 お久しぶりですっ、」



おいでーって両手を広げたら遠慮がちに



テンの腕の中に入ってくる. 小動物みたい.



『 ふふ、かわいいね 』



「 ……あいたかった、です… 」



あーもうかわいいなぁ、



こういう距離感が1番おいしい.



『 ちゅーしていい? 』



「 わ、わたしからしてもいいですかっ… 」



『 はは、どーぞ♡ 』





















これくらいが丁度いいんだよなぁ、ほんとに.



干渉されるの好きじゃないし.



今までの子はみーんな、鬱陶しかった.



テンくん次はいつ会えるの、テンくん愛してる



テンくん私これだけ頑張った、テンくんテンくん…



君たちのことなんて、見てないよ.



札束が歩いてるように見える.



お金にキスして、お金とシてる気分.



だって君たちのこと好きじゃないもん.



だから最初に言ってるじゃん.



テンはお金と体しか見てないよって.



それでもいいって言ったのは君たちなのに.



あー、また嫌なこと思い出した.











『 はぁ… 』



「 …やっぱり、疲れてますよね、? 」



『 あー、ごめんね 全然大丈夫だよ笑 』



「 少し寝ましょう、? 」












『 ごめんね、あなたちゃん 』



「 何がですか? 」



『 テンとえっちしたかったでしょ? 』



「 それは、でも…少しでもそばにいれるなら
  
  それだけで充分幸せです 」



『 …やさしいね、あなたちゃんは 』















『 …このままでいたい 』



「 ん? なんて言いました? 」



『 んーん! ちょっと寝てもいい? 』



「 どうぞ、! 」







ごめんね、あなたちゃん



テンとは会わない方が良かったかもね.










































テン、あなたちゃんとあったあの日からおかしいの.











テンこどもだからさ、全部自分中心で考えるんだ.



それに、責任も覚悟も持ってない.



テンが持ってるのはただただ褒められるビジュアルと



使っても使っても溢れかえる札束だけ.



ファンの子を抱き始めたのはいつだったっけ.



あー、たくさんお金が欲しくてこんなこと始めたんだ.



そろそろたくさん稼いだなって思ってさ、



やめようとしたんだよね、これ.



でもやめられなかった.



辞めさせてもらえなかった.



怖いね、大人って笑



最初にバレた時は何時間も叱られたのに今では



やめるな、売り上げが、お金が、って.



売上にしか興味がないからテンのことなんて



どうでもいいの、みんな.



助けてなんていう資格はテンにない.



自分から始めたことだし、笑












もうやめたいんだ、こんなこと.



ファンの子をもう抱きたくない.



純粋な目で見つめてくれるあなたちゃんを見るたびに



泣きそうになる.









自業自得って言葉がぴったりだね、今のテン.

















あなたちゃんのせいだよ.



こんな風に思うことなかった.



誰を抱いててもお金にしか興味なかった.



それなのに、もうやめたくなっちゃった.








自分のせいだってわかってるよ.



こうなったのも、何で今泣きたくなってるのかも.



でも、ほら.



テンってわがままだからさ、



助けてほしいって思っちゃうの.









だけど誰も助けてくれないこと、



ちゃんとテンはわかってる.



だから、どれくらい時間がかかるか分からないけど



こんなことやめたいって思わせてくれた



あなたちゃんにお返しをしようと思う.












だめかなぁ、笑



業界はそんなに甘くないって言われちゃうかなぁ、



それでもテンは、少しでいいから



あなたちゃんにお返しがしたい.



ちゃんとした形で.



表に立つ人として.

































『 …ね、あなたちゃん 』







































『 お願い、もう二度とテンと会わないで 』

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