町の中をミリムとステラ様を案内して周る。
それは、思った以上の重労働であった。
小さい子供を連れてレジャーランドに行った経験のある方なら、想像出来るだろう。
目を離すと居なくなる。まさにそんな感じである。
ステラ様にも止めていただきたいところだが
文句など言ったら殺されそうで言えるわけがない
少し?これが!?
不思議な程のハイテンションを全開にして、走り回っている。
さっきもガビルを見つけ、
ガビルがステラ様の警告を馬鹿にしていたらミリムが
ガビルの膝を軽く蹴って砕き、バランスを崩したガビルが倒れこんで来るのに合わせて、拳を腹に減り込ませた。
ゴフゥ! とか言いつつ、一撃で死亡寸前まで追い込まれるガビル。
ちょ、ちょっと待って…。俺の許可無く暴れないという約束は…?
と言いますか。それ以上やったら、死ぬよ?
ミリム、恐ろしい娘! というか、本当に怖いわ!
ガビルは運よく試作品の回復薬を持って来ていた。クロベエに量産依頼をする所だったらしい。
中回復薬では、体力が完全回復しなかった。
まさしく、一撃必殺に近い威力だ。本当に手加減しての威力なのだろう。
しかしこうなると、暴れないという約束なんて、当てにならないかもしれない。
ガビルはペコペコしながら去って行った。
俺に聞かないで欲しい。心底そう思った。
ミリムは図星の様子
しかも出禁って……何をしたらそんな事になるんだ
ステラ様結構心広そうに見えるが……彼女を怒らせるのはやめよう
ミリムとステラ様がそう自己紹介したとき、
今日一日、ベニマル、ソウエイと一緒にハクロウに稽古をつけて貰っていたシオンが呟いた。
ベニマルが笑いながら否定した。
不味い。先程のガビルの悲劇が思い出される。
それに少しステラ様も怒っている様子これは非常に不味い
俺がフォローを入れようと口を開きかけた時、
ソウエイ、流石である、本当にイケメンすぎて言葉も無い。
というか、ミリム君。いつから親友になったのかね?
素早いフォローで危険を回避。
俺も危うく地雷を踏み抜く所だった。ガビルの二の舞は御免である。
今後油断は禁物。俺は一つ賢くなった。
ベニマルは未だに事態に追いついていない。後で忠告してやろう。
彼は、ソウエイに比べて女心など全く理解していない。俺と同等かそれ以下である。
元が良い男だから許されているが、そうでなければ総スカンものであろう。
鈍い男とはどこでも苦労するもの。
ミリムが相手では苦労では済まないからな。
一先ず話しは流れて、食事が運ばれてくる。
ミリムはご機嫌で食べていた。
俺も人間に変身し、仮面を外す。
それを見たミリムが、
そう言った。
ニコニコ笑顔で食事を続けるミリム。
だが、他の者はそうはいかない。その目が説明を促し、俺を見て来る。
どうやら、誤魔化すのは無理そうだった。
食事が終わると、ミリムは眠そうにしている。
シュナに頼んで客用の寝室に連れて行って貰った。ベッドじゃないとか、文句言わないといいのだが…。
ここにはベッドは無く、畳モドキと布団なのである。
ま、無いモノは仕方無い。シュナに任せて、こちらは本題に入る。
俺は、皆に本日の出来事を話して聞かせた。
ステラ様が何か言いかけてた気が……
それとガビルの反応はともかく、他の者も驚いている。
そりゃそうだ。魔王がやって来たのだから。
俺が問うと、
とカイジンが言い出した。
ハクロウや鬼人達も頷いている。
と、ソウエイやベニマル、ステラ様は言った。
どういう事?
説明によると、自然発生した魔物が嘘をつきにくいのは本当の話。
でも、親から生まれた魔物はその辺りルーズになる。ドワーフ王の言っているのは、"誓約の魔法を行使した上で、自分の存在に誓った場合"という条件での話しなのだとか。
『大賢者』の補足説明を聞き流したのが失敗だった。
悪魔族だけは、より制限が厳しいようだが、単なる魔物なら然程ではないのだそうだ。
という事は……
ハクロウが頷いた。
さて、どうしたものか。
確かにそうだ。全員でかかっても無理そうだ。ステラ様は除いて
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。