第29話

第29話 気になること
190
2026/08/24 11:53 更新
you
you
別に気にしてないよ
そう言った私に、ジョンハンは少し安心したように笑った。
ジョンハン
ジョンハン
なら良かった
それだけの会話。

それだけのはずなのに。

なぜか胸の奥に小さな引っかかりが残った。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

その日の帰り道。

私は一人で駅へ向かっていた。

頭の中では、さっきの会話が何度も繰り返されている。

『無意識だった。』

ジョンハンはそう言った。

でも。

普通、そんなことあるだろうか。

さん付けで呼んでいた相手を、急に名前で呼ぶなんて。

しかも自然に。

まるで昔からそう呼んでいたみたいに。
you
you
考えすぎかな……
私は小さく呟いた。

けれど違和感は消えなかった。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

夜。

ジョシュアと夕食を食べに行った。

大学近くのいつもの店。

落ち着く場所だった。
ジョシュア
ジョシュア
最近どう?
you
you
どうって?
ジョシュア
ジョシュア
最近変わったこと
私は少し考える。

変わったこと。

たくさんある気がした。

夢を見ること。

頭痛。

思い出せない記憶。

ジョンハンのこと。

だけど。
you
you
特にないです
結局そう答えた。

ジョシュアは少しだけ私を見つめる。
ジョシュア
ジョシュア
本当に?
you
you
本当です
私は笑った。

ジョシュアもそれ以上は聞かなかった。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

食事を終えた帰り道。

二人で並んで歩く。

夜風が少し冷たかった。
ジョシュア
ジョシュア
あなた
you
you
はい
ジョシュア
ジョシュア
何かあったらちゃんと言って
突然そう言われた。

私は驚く。
you
you
どうしたんですか?
ジョシュア
ジョシュア
なんとなく
ジョシュアは苦笑した。
ジョシュア
ジョシュア
最近考え事してる時増えてるから
私は言葉に詰まる。

そんなに分かりやすかっただろうか。
you
you
大丈夫
そう答えると、ジョシュアは優しく頭を撫でた。
ジョシュア
ジョシュア
ならいい
その手は温かかった。

安心する。

なのに。

胸の奥のもやもやだけは消えなかった。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

その夜。

私は久しぶりに高校時代のアルバムを開いた。

家族が保管していたものだ。

何度見ても思い出せない。

それは変わらない。

ページをめくる。

文化祭。

体育祭。

修学旅行。

たくさんの写真。

楽しそうに笑う自分。

でも。

他人の思い出を見ているようだった。
you
you
……
ページをめくる手が止まる。

集合写真だった。

たくさんの生徒が写っている。

私は一人ひとりの顔を見ていく。

その時だった。

写真の端に映る男子生徒を見た瞬間――

胸が大きく跳ねた。
you
you
え……
知っている。

そんなはずないのに。

見覚えがある。

私は思わず写真に顔を近づけた。

けれど。

画質が悪くて顔まではよく見えない。

ただ。

その姿を見た瞬間。

胸が苦しくなった。

懐かしくて。

切なくて。

理由の分からない感情が込み上げる。

私はそっとアルバムを閉じた。

そして知らなかった。

その写真の端に映っていたのが――

ジョンハンだったことを。

プリ小説オーディオドラマ