あなたside
なんでだろう。私はいつも運が悪い
まさか1時間目が、音楽で歌の練習だったなんて
あの日以来、歌っていないのに
声が出なかった
昔なら一番に手を挙げて『ソプラノ』と言っていたんだろう
一番高い音が好きだったから。誰よりも遠くまで届く感覚が、好きだった
やっとの思いで出た声は自分でもびっくりするぐらい、震えていた
悪気ゼロ、ただの疑問
空気が一瞬だけ止まり、私はほんの少し笑う。
ピアノの音が鳴り、明るい旋律が教室に広がる
ソプラノパートが終わり、アルトのパート
出せる、音程も覚えた。
でも……
『声が出なくなってしまうかもしれません』
あの日の声が蘇る。息を吸いかけて、止める。
皆の足を引っ張ってしまった。1人の声がないだけでも歌というものは変わってくる
分かっている、私が1番分かっているのに
どうしても声が出なかった
練習終わりにクラスの女子生徒に呼び出された
分かってるんだってば
それしか言葉が出てこなかった
声を出したい、皆と一緒に歌いたい…けど、私には 無理だから
それから授業中ずっと、1時間目の終わりに 言われたことを考えてた
歌わなかっただけで、こんなにも言われるのか。
私何回か思ってたけど、貴方のピアノだって間違えてたじゃん。
自分の言葉だけ正当化してさ、おかしいでしょ
聞かれてた?
もし、聞かれてたら…また私は独りぼっちだ。
お昼ご飯…か
私はわずかに視線を逸らしながら言うと、類は楽しそうに目を細めた
くす、と笑う。
逃げてみようと思っても、私たちの席は廊下のドアあたりだから、逃げ道は塞がれている
先程まで、先生と話していた天馬くんもこちら側へ来た
そうして3人横並びで屋上へと向かった














編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!