第10話

特別
1,711
2024/02/23 00:43 更新
昼休みの講堂で、

俺はいつものように仲間に囲まれている。




テヒョンも斜め前の席で

他の仲間と他愛もない話で盛り上がっている。



こうやって、テヒョンと一緒に過ごす時間が

自然と増えてきたけど、

いつも他の誰かと一緒で



テヒョンにとっての俺は、

単なる友達の中の1人…






ジミンのような「特別」にはなれない。





それにしてもジミンって

やっぱりすごい。



どんなに重い雰囲気でも

ジミンがそこにいるだけで

空気が変わるんだ。


みんなが口々に言う。

「ジミンがそう言うなら…」

「ジミンの頼みなら」 って。


昔からそう、

情に熱くて、男気がある。


今も昔も

やっぱりジミンには敵わない。






俺だって…

周りの人にはいつも恵まれていた。

友達だって多い方だし、

彼女だって今まで何人も…




なのに、どうしてテヒョンの事になると

こんなに臆病なんだろう…


自分にまるで自信が持てなくなる。



俺は、テヒョンにどんな風に思われてるんだろう…


嫌い…ではないよな…?




だって、この前好きって言ってくれたし…




まぁ、それは…

ちょっと抜けてる俺が好き…って事だけど。




何だっていいんだ…


今は、テヒョンの心の片隅にでも

俺がいたら嬉しいから。



ジミン
ジミン
やっと解放されたぁ。
俺、教授に目つけられてんのかな…
ジミンが教授からの呼び出しから戻ると、

みんなが笑いながらジミンを迎える。


ジミン
ジミン
よぉ!親友。
肩を組みながらジミンは

いつも通りに俺の隣の席に座る。



何だかんだ言っても

コイツの横が一番落ち着くんだよな。




ジミンの笑顔を見てると

心があったかくなるって言うか

自然体の俺でいられる…。



ほら、目を見つめられても

全然見ていられるし。





それに比べて…


テヒョンに見つめられると


心臓がギュッと掴まれるみたいに


苦しくなって…



ドキンッ…



前に座るテヒョンに視線を移すと


さっきまで前を向いて

仲間と話していたテヒョンが

俺たちを見上げていた。



いつから見てた…?








一瞬、俺の方を見たかと思って

ドキっとしたけど、

視線はすぐに横にいる

ジミンに向けられた。




ジミンを見るテヒョンの優しい表情。



子供が母親を見つけたように

安心したような瞳…




その視線の意味が

恋愛とは違う物だって、ちゃんとわかってる。




ほらね。


やっぱりジミンは特別なんだ。





テヒョン
テヒョン
昼…食べたの?
ジミン
ジミン
いや、食べてないから腹ペコ…
テヒョン
テヒョン
これ、食う?
テヒョンは鞄からおにぎりを取り出して

ジミンに差し出す。


あ…
ジミン
ジミン
マジでー♪
サンキュー…って、、おいっ!!
ジミンの大きな声で我に返る。

気がついたら、俺はジミンに差し出された

おにぎりを、テヒョンの手ごと握り締めていた。


テヒョン
テヒョン
えっ…
ジョンウン
ジョンウン
え…?
あっ…えっと、、ごめん!
パッと手を離して


テヒョンの顔を見ると


目をまん丸くして固まっている。




俺、マジで何してんだろ…






でも…テヒョンの作ったおにぎり…

他の人に食べさせたくないって思ってしまったんだ。





それが例えそれが


親友だとしても…


テヒョン
テヒョン
食べたいの…?



テヒョンが俺に向かって

おにぎりを持った手を差し出す。


ジョンウン
ジョンウン
えっ…いいの…?
ドクン…ドクン…
テヒョン
テヒョン
だって、腹減ってんだろ?
ジョンウン
ジョンウン
いや、腹はそんなに…
テヒョン
テヒョン
すごい欲しそうだったから、

めっちゃ腹減ってんのかと思った…
あ…やば…

えっと…
ジョンウン
ジョンウン
減ってる!!
そうだった。思い出した!
めちゃくちゃ腹ぺこだったんだ。
つい力が入って

思ったよりも大きな声を出してしまった…





みんなの視線が俺に集まっているのを

痛いほど感じる。



でも…今はテヒョンから視線を逸せない。



俺、変な奴だと思われてるよな…


少しの間を置いて

テヒョンが何か言いたげに口を開こうとした時、

ジミンの声が響く。



ジミン
ジミン
はっ?何言ってんの!?
これ、俺にくれるって言ってたじゃん!
ジョンウン
ジョンウン
でも、今は俺にくれるって言ってるから!
ジミン
ジミン
お前、腹減ってないって言ってたじゃん!?
ジョンウン
ジョンウン
いや…本当は空いてる…
ジミン
ジミン
嘘つくな!
さっき減ってないって言った!
ジョンウン
ジョンウン
言ってない。俺はずっと腹ペコだから…
ジミン
ジミン
はぁ??
お前、言ってる事おかしいぞ?
ジョンウン
ジョンウン
なぁ…おにぎり一つでそんなに
大きな声を出すなよ。
子供みたいで恥ずかしいぞ。
ジミン
ジミン
なっ…ジョンウン…お前っ、、
テヒョン
テヒョン
ぷっ…
ジミン
ジミン
テヒョン…?
テヒョン
テヒョン
クックッ…フッ…ハハハッ!
急に堪えきれなくなったように

テヒョンがケラケラと声をあげて笑い出す。



みんな呆気に取られたような顔で

テヒョンを見つめる…


テヒョン
テヒョン
ハハハ…お前ら、、ほんっと笑える。
おにぎり一個で喧嘩する歳かよw
テヒョンにつられて、みんなも笑い出す。




びっくりした…


テヒョンって、こんな笑い方もするんだ。





新しい一面を知る事が出来て


胸がドキドキしてる。





笑顔のテヒョンは少しあどけなくなって

何だか可愛い。






そんなテヒョンを見て、

俺はすごく嬉しくなったけど…



あの笑顔を俺だけの前で

見せて欲しいって思ってしまう。



テヒョンの事を

独占する権利も、資格もないのにさ…


どんどん欲張りになっていく。


恋って…大変。



ジミン
ジミン
わかったよ…

そんなに腹減ってんなら
ジョンウンにやるよ。

誰か飯買いに付き合って!
男友達A
行くー。
ジミン
ジミン
よし。ちょっと行ってくるわ!
ジョンウンは?何か食べ物買ってくる?
ジョンウン
ジョンウン
あっ…俺が何か買ってくるよ。
ジミン
ジミン
大丈夫!
その代わり今度奢れよー
ジミンは立ち上がり、俺の肩をポンっと叩いていく。
ごめん…

本当は腹なんか空いていないのに。



手に残されたおにぎりを見つめながら

ちょっとだけ罪悪感が残る。







テヒョン
テヒョン
そんなに好き…?
声に反応して視線をあげると、

テヒョンが頬杖をついて俺を見上げていた。
ジョンウン
ジョンウン
え…
えっと…その、、
うそ…


そんなストレートに聞かれるなんて…

テヒョン
テヒョン
…おにぎり。

なんか…取り合ってたから。
あ… おにぎり…





テヒョンの事かと思った…





特別な感情を持っているのは

俺の方だけなんだから…



テヒョンの何気ない一言に

俺の心がジェットコースターみたいに

揺れ動くって知らないだろ…?






テヒョン
テヒョン
ジョンウン?
テヒョンが俺の名前を呼ぶ…
ジョンウン
ジョンウン
あぁ、ごめん…
大きな瞳が、じっと俺を見つめる…


テヒョンの視線が

今は他の誰でもない

俺だけにむけられている…





ジョンウン
ジョンウン
うん…好き…


湧き上がってくる想いを


堪える事ができなくなってくる…
ジョンウン
ジョンウン
大好きだ…
テヒョン…

お前の事が好きなんだ…
テヒョン
テヒョン
え…
テヒョンの瞳が左右に揺れて

一瞬時が止まったように見つめ合う。
ジョンウン
ジョンウン
あ…えっと、、おにぎりだろ?
うん。昔から好きなんだ!
俺、今上手く話せてる…?

ちゃんと笑えてるかな。



テヒョン
テヒョン
そっか…そんなに好きなんだ!
はは!変わった奴だな。
良かった…テヒョンも笑ってくれた。
ジョンウン
ジョンウン
ふふ…よく言われる。
大丈夫。

ちゃんと誤魔化せてるよな…




テヒョンはふと考え事をするような

表情を見せる。





テヒョンのこのゆっくりした話し方や

会話のペースがすごく心地よく感じる…



テヒョン
テヒョン
あっ!…キンパも好き?
パッと何か思いついたように目を開き、

口を尖らせるような表情で

テヒョンが俺に尋ねる。




ジョンウン
ジョンウン
うん…好きだけど、、
何で急にキンパ…?
テヒョン
テヒョン
なら、また遊びに来れば?

俺、キンパならもっと美味く
作れるから。
ドクン…
ジョンウン
ジョンウン
行っていいのか…?
ドクン、ドクン…
テヒョン
テヒョン
んっ?

別に…いつでも来ればいいのに。
またゲームでもしようぜ。
ジョンウン
ジョンウン
うん…行く!!
絶対に行くから…
あ…

すごい大きな声出してしまった…


テヒョン…変に思ったかな?


だって…嬉しかったから。


テヒョン
テヒョン
ふっ….
やっぱりジョンウンは変わってるw

絶対か…
テヒョンは少し間をおいて
テヒョン
テヒョン
じゃあ…約束。
右手の小指を立てて、俺に差し出す。





ドクンッ!




鼓動がさらに速くなる。



ジョンウン
ジョンウン
うん…約束。
指切り…


何年ぶりだろう。




緊張で震える小指を


テヒョンの小指に絡める。








どうか…

この胸の鼓動がテヒョンに

気づかれませんように。




ジウン
ジウン
何…?
あんた達、なんか約束でもしたの?
突然声がして横を見ると、

ジウンが俺の隣に座って

俺とテヒョンの2人を交互に指差していた。
ジョンウン
ジョンウン
別に…たいしたことじゃないよ。
遊ぶ約束しただけ。
ジウン
ジウン
ふーん…。
テヒョンは片眉をあ上げて、

少しおどけた表情を見せてから、

前に向き直る。



約束か…



テヒョンと初めての約束…


お前にとっては何でもない事なんだろうな。




でも…俺にとっては


身体が震えるほど嬉しい事なんだ。



テヒョンと絡めた小指に

視線を落とす。


心にじわりと温かいものが広がっていく…







ジウン
ジウン
珍しいね…。
ジョンウン
ジョンウン
んっ?
ジウン
ジウン
初めて見たから…。
ジョンウンがあんなにムキになるとこ…
ジョンウン
ジョンウン
そう…かな?
たしかに…


ちょっとムキになりすぎたかも…
ジウン
ジウン
…いつもは簡単に譲るくせに…
ジョンウン
ジョンウン
え…?
ジウンが節目がちに

小さな声で何か呟いたけど、よく聞こえない。
ジウン
ジウン
ううん!何でもない…
ジョンウン
ジョンウン
そう…?
いつも笑顔のジウンと

雰囲気が違うから

少しだけ気になる…
ジウン
ジウン
ジミンが帰って来る前に、
早く食べちゃいなよ!
じゃあね!
いつもの元気なジウンに戻った…

さっきの表情は何だったんだろう。






再び、前に座るテヒョンに視線を向ける。




この席は結構好きなんだ。





テヒョンの事をずっと見ていられるから…





いつか…


今じゃなくていいんだ。



隣に座って、肩を組んで笑いあったり

たまには喧嘩をしたり。



優しい目で見つめられて


俺も自然に見つめ返せるような


そんな関係になれるかな…?




その時は、隣に座らせて…









俺の今の望みは



テヒョンにとっての


「特別」な存在になりたいんだ…




だから…テヒョン。


もっと俺をみてよ…





お前に見つけてもらえるような

俺になるからさ…





テヒョン…好きだよ。






テヒョンのおにぎりを机において

スマホのカメラを構える。





カシャ…




また一枚…大切なモノが増える。






プリ小説オーディオドラマ