そんなある日、事件が起きた。
…なんだこれ。
下駄箱の中に入っていたのは何も書いていない封筒。
中を見れば「放課後、体育館裏で待っています。」とだけ書かれた便箋が入っていた。
…面倒くさいし帰っちゃお。
そう結論付けて何事も無かったかのように、便箋を封筒の中に戻そうとする。
すると姫川さんが承諾もなく便箋を奪い取ってきた。
と余計なお世話をやいてくる。
姫川さんに見送られ、仕方なく体育館裏に向かった。
__________________
…おかしい。
体育館裏に来てみれば誰もおらず、いくら待っても誰か来る気配はない。
多分これも嫌がらせなんだろう。
暇なんだろうか。暇なんだな。
大きなため息をつき、さっさと帰ろうと踵を返す。
その時。
ぶわっと全身に鳥肌が立った。
…なんだ…一体何が…
後ろに何かいる。恐ろしい何かが。
ダラダラと冷や汗をかく。
意を決して後ろを振り向いた。
__________________
クソっ…こんな時に何でスマホないの…!?
家、学校に忘れたか。それともどこかで落としたんだろうか。
…いや、そんなことは今どうだっていい。
問題は__。
飛び込むように角を曲がった。
ドンッ!!!
もの凄い衝撃波で吹き飛ばされ、転がっていく。
痛みに耐えながら後ろを見れば、攻撃が直撃した地面がえぐれていた。
逃げなきゃ。早く。
一般人を巻き込むわけには行かない。
早くっ…人気のない場所へ…!
__________________
膝に手をつきながら、肩で息をする。
周りに人が住んでいる家もなく、子どもも来ない廃れた広めの公園。
その公園に逃げ込んで来た。
顔を上げれば、直後に姿を現す。
こちらを見下ろしてバカにしたかのように笑っている呪霊が宙に浮いていた。
経験の少ない私の見立てなので、本当に特級かどうかは分からない。
だがこの呪力量と、今まで感じたことのないこのプレッシャー。
…今まで戦ったことのある呪霊の中で、間違いなくダントツで強い。
これ以上兄さんの負担になりたくないと、迎えを断ったのがつい一週間前。
兄さんはそれでも迎えに来てくれようとしたが…しっかり断ったのであれからは来ていない。
兄さんなら難なく祓えただろう。
だが兄さんが駆けつけてくれる可能性はゼロに近い。
私が…祓えるのか?術式もろくに扱えない私が…
兄さんに連絡が取れれば…
連絡が取れないのだからどうしようもない。
ここまで来るのにあれだけ追い詰められたのだから、どの道逃げられない。
万が一逃げ切れたとしても、そうなれば一般人に危害が及ぶ。
…やるしかない。ここで私が。
運が良ければ高専への報告や、他の術師の加勢が期待できるかもしれない。
すっかり息も整った。
落ち着いて眼鏡を外すと、呪いを睨みつける。













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!