私が優吾に想いを告げてから数日後。
空と私は初めて優吾の家に遊びに行った。
「「おじゃまします。」」
空と私は緊張しつつ、部屋に入った。
潔癖症で、なかなか他人を部屋に入れない優吾が呼んでくれるなんて…奇跡だな。
「いらっしゃい。よー、空。久しぶりだな!!」
「優吾、私達シャワー浴びようか?」
空に聞こえないくらいの小声で念の為聞いてみた。
「シャワー…浴びなくていい。あなたが浴びたら帰したくなくなるから。」
優吾も小さな声で答えてくれたが、『帰したくなくなる』と耳元で言われ、耳が熱くなるのがわかった。
「おかあさん?どうしたの?早くおいでよ!」
空に呼びかけられて我に返った。
優吾と話し合い、付き合い始めたことは伝えるが、空がまだ幼いので優吾が父親だということを伝えるのはもう少しあとにしようということにした。
「こーち!ねぇ、遊ぼう!」
そう言ってはしゃぐ空。
「空、遊ぶ前にちょっとだけお母さんたちのお話を聞いてもらってもいい?」
そう言って、空を座らせた。
「なーに?お母さん。」
空はきょとんとした顔で私を見ていた。私が話そうとしたら優吾が話し始めた。
「空ー。俺ね、あなたのことが大好きなの。もちろん空のこともね。」
「うん、僕もお母さんとこーち大好き!」
そう、無邪気に答える空。、
「ありがとう。」
そう言って空の頭を撫でる優吾。嬉しそうな空。そして話を続けた。
「今まで空があなたのこと守ってくれてたと思うけど、これからは俺も一緒にあなたのこと守ってもいい?もちろん、空のことも守るよ。」
優吾の話がいまいち理解できていないようだった。
「あのね、空。お母さん、優吾…えーっとこーちのことが好きなの。空が生まれる前から…。」
「うん、知ってるよ。」
その言葉に私も優吾も驚いた。すると、空はこう続けた。
「ほっくんもふっかもあべちゃんもひーくんも…他のみんなのことも好きでしょ?だからお友達なんでしょ?」
そういうことか。私はきちんと説明をした。
「うん、もちろんみんなのことも好きよ。でもこーちの好きはみんなとは違うの…みんなはお友達として好きなんだけど、こーちはもっと特別なの。」
そこまでいうと、あ!っと何かひらめいたようだ。
「ぼくわかった!前にひーくんが言ってた『こいびと』ってやつだよね?」
「うん、そうだよ。空はよく知ってるね!」
優吾に褒められて得意げな空。でもふと気がついたようだ。
「え?じゃあもうひーくんとは『こいびと』にはならないの?悪いところを直したらまた『こいびと』になるって言ってなかった?」
そう言って私を見る空。
「えっとね…お母さん、間違えてたの。」
「間違い?」
「うん。お母さん、ひーくんのこと好きなんだけどそれはお友達としてだったの。恋人として好きなのはこーちだって気がついたの。」
そう言うと空はよくわかってないかもしれないが、「わかったー」と返事をした。
「ねぇ、空。俺があなたの恋人になってもいい?」
優吾は空に真剣に聞いていた。
そして空の返事を優吾と私はドキドキしながら待った。
「もちろん!!!だって僕たち、アンパンマン仲間だもん!!!」
アンパンマン!ここでも味方をしてくれてありがとう。
私達はほっと胸を撫で下ろした。
「ねぇお話し終わった?こーち!遊ぼう!!」
そう言って2人で遊び始めた。2人が遊んでいる姿を見ながら私はご飯の用意をした。
こうして3人での時間がやっと動き始めた。
時は経ち、もうすぐ空は小学生になる。
喧嘩をすることもあるが、優吾と空と私は仲良くやっている。
ふっか達のスタジアムライブも大成功に終わった。
そして優吾たちも周年で色々なことに挑戦していた。
優吾と話し合い、グループとして波風はたてたくないので結婚はまだ先になると思うが、空にはそろそろ真実を話そうということになった。
「空。ちょっとお話があるんだけどいいかな?」
本を読んでいた空に声をかけた。
「うん。」
そう言って本から顔を上げる空。
空の前に優吾と2人で座った。
「あのね、大事な話をするね。」
なーに?と不思議そうな顔をする空。私は深呼吸をしてから真実を告げた。
「空のお父さんのことなんだけど…実は優吾が空の本当のお父さんなの。」
そう言うと空は黙って俯いてしまった。
「あのね、空。空がお母さんのお腹に来たとき、お母さんは本当に嬉しかったの。でもその時、優吾はグループとして大事なときで…みんなみたいに結婚してお父さんとお母さんになるっていうのが難しかったの。でもお母さんは空にどうしても会いたかったの。だから優吾に内緒で空を産んだの。」
まだ俯いたままの空。
「再会して、恋人になる少し前に優吾には本当のことを伝えたの。そして空はまだ小さいからもう少し大きくなったら本当のこと教えようって2人で決めたの。」
「今まで黙ってて、ごめんな空。」
そう謝る優吾。でもまだ空は俯いたままだった。
「空?」
私がそう呼びかけると突然上を向いて叫び始めた。
「やったー!!!!やっぱりそうだったんだね!」
私と優吾は落ち込んでる、または怒っているのかと思っていたので大喜びでテンションが高い空にびっくりした。
「僕ね。ダディがお父さんなんじゃないかなって思ってたの。お母さん、僕が生まれる前からダディのこと好きだって言ってたし。アンパンマン好きなのも一緒だし。」
テンションが高いまま話し続けた。
「僕、救急車に乗ったことがあったでしょ。その時、ダディがくれたアンパンマンがいて心強かった。なんだか、守られてる気がしたの。だから、ダディがお父さんならいいなって思ってた。」
ここでもアンパンマンが味方してくれていた。
「あとね。樹にダディって『お父さん』って意味だよって教えてもらったの。僕、お父さんって呼びたかったけどそれはダメな気がして…でもみんなも呼んでるからダディならいいかなって!」
付き合い始めてから数カ月後に突然、ダディと呼び始めた空。そんなことを思ったていたのね。
拒絶されたらどうしようと不安だったのだが、思いのほか、大喜びの空を見で、私はホッとして涙がこぼれた。
「お母さん、どうしたの?どこか痛いの?」
空に心配され、優吾には肩をぐっと抱かれた。
「痛いんじゃないよ。あなたは嬉しいんだよ。空、このことずっと黙ってて俺とあなたのこと、怒ってない?」
「怒るわけないよ!」
「俺、お父さんになってもいい?」
「うん!もちろん!嬉しすぎる!」
「ありがとう、空。」
「ねぇダディ。一緒にキャンプ行きたい!」
「うん、行こう。」
「アンパンマンミュージアムも行きたい。」
「行こう、行こう。」
「バイクの後ろにも乗せて!」
「もちろん。」
「あとダンスも教えて!」
「ダンスは…俺よりあなたのほうがうまいから…。」
「でも僕はダディに教えてほしいの!」
「わかったわかった。俺も練習しておくな。」
そして3人でこれからのこと、色々と話をした。
少し前に始まった3人での時間。
今日からは親子としての時間が始まった。
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。