第10話

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2025/10/19 12:47 更新
夜の時計が11時を指す。リビングは静かで、テレビもBGMも消えたまま。テーブルの上には開けかけのワインボトルと、グラスが二つ転がっていた。

大夢はソファにもたれながら、赤く染まった頬でグラスを見つめていた。

「、ふたり、まだ帰ってこないんだ…」
そう呟いて、グラスを口元に運ぶ。もう味なんてわからない。けど、胸の奥のもやもやをどうにかしたくて、
ワインを流し込むしかなかった。

今日は三人でごはんを作るはずだった。なのに威尊と理人が「買い出し行ってくる!」って出ていって、それからもう、2時間以上。ふたりで笑いながら出ていった背中が、やけに仲良く見えて。最近ずっと2人で仲良くしたり遊んだりご飯食べに行ったりで。
「……俺、いなくてもいいのかも」
そう思った瞬間、胸の奥がキュッと痛んで、ワインの栓を開けた。

頬が熱くて、涙がにじむ。
「威尊、理人……俺、いっしょにいたかったのに、」

そのとき、玄関の扉が「ガチャッ」と開いた。
「ただいまー!おーい、大夢ー?」
「おぉ、寒っ。なぁたけちー、この袋重すぎやろ!」

賑やかな声。ふたりが帰ってきた。
大夢は目をこすりながら顔を上げる。

「、あ、威尊、理人……」
「ん? ……え、ちょ、大夢、顔どないしたん!?」
威尊が慌てて駆け寄ってきて、大夢の頬を覗き込む。
「めっちゃ赤いし、目もうるうるやん」
理人も袋を置いて、隣に座る。
「大夢、これ……ワイン飲んだん?」

「……ちょっとだけ、のつもりだったんだけど……」
「ちょっとちゃう量やろこれ」威尊が苦笑する。
「だって……ふたり全然帰ってこないし……」
「うわ、ごめん。店混んでて時間かかったんよ」
理人が頭をかきながら、申し訳なさそうに笑う。

「でも、ふたり楽しそうだったから……俺、なんか……」
言葉の途中で、大夢の目からぽろっと涙が落ちた。威尊と理人は顔を見合わせて、同時にため息をつく。

「...ほんまアホやなぁ」威尊が呟いて、大夢の頭を撫でる。
「誰が置いてく思とるんよ。」
理人も優しく背中をさすって、
「寂しかったんやな、俺らの可愛い子」

「…寂しかった……」
大夢がその言葉を絞り出すように呟いた瞬間、威尊はぎゅっと抱きしめた。
「ほら、ちゃんと言えたやん。よしよし」

理人も反対側から抱きしめて、
「なぁ、大夢。大夢がおらんかったら、俺らどうやって笑うんよ」
「……ほんと?」
「ほんまや」威尊が即答する。
「俺ら、三人でひとつやろ。大夢は真ん中」

大夢の目がうるんで、
「…やだ、ふたり、優しすぎる……」
「優しくして何が悪いねん。俺の彼氏に決まっとるやろ」威尊が笑う。
「そうそう。大夢は俺らの自慢やで」理人が頬に手を当てる。

「ふたりとも……ずるい…」
「ずるいってなんや。甘えたいくせに」
「甘えてないもん……」
「じゃあ、その顔なんやねん」理人が笑いながら指で大夢の頬をつつく。

「……ふたりとも、好きすぎてどうしたらいいかわかんない……」
「その言葉、反則やな」威尊が息を呑む。
理人も微笑んで、
「もう可愛がるしかないやんな、なぁ威尊」
「せやな。今夜はとことん甘やかそ」

「え、ちょっ……!」
驚く大夢を、二人はそのままソファに押し倒すように抱き寄せた。左右からぴったりと密着して、
理人が髪を撫で、威尊が耳元で囁く。

「寂しいとか、言わんでええようにしたる。俺らがずっと隣おるからな」
「…威尊……」
「なぁ、大夢。俺らは大夢が笑ってるのが一番幸せなんよ。」理人の声が低くてあたたかい。
「……ふたりとも、ほんとに優しい…」

威尊が唇を寄せて、
「俺らが誰のこと好きか、わかる?」
「…俺、でしょ……?」
「正解」

理人も笑って、「大夢以外見てへんって、なんでわからんの」

大夢は頬を染めながら、
「……二人とも、好き。ほんとに大好き」
その言葉に、威尊と理人が同時に顔を寄せて、
頬に、唇に、額に、やさしくキスを落とした。

「俺らもや。大夢が世界でいっちゃん大事や」威尊が囁く。
「これからもずっと、一緒やからね」理人が重ねる。

「……うん……三人で、ずっと……」
大夢が笑って、
そのまま威尊の胸の中で目を閉じた。

理人がその髪を撫でながら、
「寝た?」
「たぶんな。……ほんま可愛いな、こいつ」
「明日起きたら恥ずかしがるやろな」
「そん時も甘やかしたる。この子、すぐ不安になるから」
「せやな。俺らで守ったる」

月明かりが静かに三人を包み込む。その光の中で、威尊と理人は大夢の頬にもう一度、
そっとキスを落とした。

「おやすみ、大夢」
「おやすみ。俺ら、ずっと一緒やで」

外の風が優しく揺れて、
三人の影はひとつに重なっていった。

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