話をしたいのならば図書室から出ればいいのだけど、机の下で内緒話というのが意外なほど楽しかった。
小さな頃、2人の兄が作った秘密基地に入ワクワク感に近いものがある。
じゃなかったら、図書室の先生に見つからないようにする「かくれんぼ」か。
たぶん、それだ。
いまあなたが味わっているこの楽しさは、童心に返るとか、そういうやつだ。
久保隼斗が小説を書いていると教えてくれたことも、何かこう、夢があるというか、自分が知らぬまに忘れてた素直さみたいなものを思い出させねくれる。
隼斗の学ランの袖を摘まんで引っ張ってみたが、隼斗の反応はよろしくない。
こういうとき、紗子だったらどうやって頼むのだろうと、ほんの、一瞬の十分の一くらい考えてみたが、駄目だ。
今ここで大声は出せないのだから、なんにせよ参考にはならない。
隼斗が、皺を伸ばすみたいにノートの表紙を撫でる。
下手なところ?
あなたも、自分が無理を言っているのは分かっている。
でも不思議と、その無理を隼斗に対しては言えてしまう。
たぶん、この「かくれんぼ」感がそうさせているのだろう。
今日、隼斗とはほとんど初めて口を利いたのに、もう昔から知っている友達のように思えてならない。
隼斗にとっては、ただの迷惑な錯覚なのだろうが。
隼斗は、まだノートの表紙を撫でている。
隼斗が、まあまあ、みたいに掌を向ける。
なるほど、言われてみればそうかもしれない。
難しい?
まだ夏休みも終わってないのに、冬って
舜斗が、うん、と1つ頷く。
正直、パソコンのことはよく分からないが、そんなに難しいことなのだろうか。
舜斗が、目をまん丸くして仰け反る。
なるほど。
今のところ、ちょっと引っ掛かった。
舜斗は急に表情を失くし、半分くらい薄目であなたを見た。
一周回って貶されてるようにしか聞こえないが、気づいたのはあなただ。聞き逃さなかったあなたの勝ちだ。
舜斗が、がっくりうなだれる。
口がすべった、というやつか。
でも、そんなことに落ち込む必要はない。
それくらい、誰にだってよくあることさ。
















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。