日向と交代したのは、山口くん
正直私は、山口くんが試合にでれることに驚かなかった
むしろ、山口くんが試合に出るとは思ってたし、期待してた
コートの中の山口くんを見る。
あなた「……ふ笑和久南戦と別人みたい」
ボールを持つ手も、視線も、まっすぐ前を向いている。
堂々としてる。
ふと、頭をよぎる。
和久南戦。
悔しそうに俯いていた背中。
――でも、そのあと。
『“もう一度チャンスをください”』って
自分から言った。
逃げたまま、終わらないために。
あなた「(ちゃんと覚悟決めたんだね)」
すごいや
ピッ
深く息を吸って――
静かに、トスを上げる。
踏み込みに迷いがない。
バンッッ
鋭く放たれたサーブ。
アウト……!?
かな「……っ」
……いや、
次の瞬間――
ボールが、ふっと落ちた。
空気を切るみたいに、軌道が変わる。
ライン際、ギリギリ。
あなた「イン!!!」
ピッ
烏野「しゃぁぁぁ!!!!!」
あなた「ナイッサー!!!」
谷地「やったぁ!!!」
冴子「ただしぃ!!!」
滝ノ上「よっしゃぁぁ!!」
「え、なに、大袈裟じゃね?」
「たったの1点だろ」
あなた「……」
たったの1点、か、
確かにたった1本のサーブ。
スコアが大きく動いたわけでもない。
でもーー
あなた「(違うんだよ)」
あの1本の裏にあるものを、私は知ってる。
何度も何度も失敗して。
思うように入らなくて。
それでもやめなかった練習。
練習試合、試合で、悔しそうに俯いてた姿。
それでもーー
逃げたまま、終わらなかった
胸の奥が、じんわり熱くなる。
あなた「だから、あの1本は……」
ただの1点じゃない
コートの中で、山口くんが次のボールを受け取る。
その横顔は、もう迷っていない。
ちゃんと、自分で取りに来た1点
それに、次、があることはとても嬉しいだろう
あなた「……!」
嶋田さんが小さくガッツポーズしているのが見えた
あなた「嶋田さん、よかったですね!」
嶋田「!あぁ!」
嶋田さんも相当嬉しいだろう
近くで見守って、成長する山口くんを見てきたから___
ピッ
渡「京谷!!」
あなた「!!」
ピッ
あなた「今度は伸びた!!」
16番の手に弾いてこっちの得点に
冴子「なんなの!?あのサーブすげーー!!」
ピッ
花巻「オーライッ」
さすが3年……オーバーで拾われた
判断が早い
花巻「岩泉!!」
バンッッッ
あなた「!!ナイス!!」
山口くんが体に当てた
そうだよ!絶対サーブ権は渡すな!!
烏野「カバーーー!!」
澤村「月島ー!ラスト!!」
あなた「!!」
上手い……!
嶋田「ブロックアウト!!」
滝ノ上「上手いことブロック引っ掛けたなー!これで3連続!!」
23-22
ピーーーッ
嶋田「お、青城タイムアウトか」
滝ノ上「物理的に流れ切ってきたなぁ」
青城にタイムアウトとらせるなんて山口くんすごい!!
冴子「おっしゃぁ!!勝つぞ!!」
滝ノ上「このまま一気に行けー!!」
あなた「山口くーん!!決めちゃえー!!」
ピーーーッ
烏野「よっしゃぁぁぁ!!」
あなた「山口くんもう1本!!」
ピッ
放たれたサーブ。
ネットへ一直線。
ネットに触れて、わずかに軌道が変わった
ふわりと、力を失ったボールが相手コートへ、ぽとりと落ちた。
ポトン
ピッ
あなた「ネットイン!!」
23-23
「これで同点!?」
「烏野追いついた!!」
冴子「あのネットイン!?さっきの和久南戦にもあったよね!?忠ラッキーボーイだなぁ」
谷地「うんうん!!」
あなた「いや、ラッキーとか関係ないと思いますよ」
冴子「どういうこと!?」
ラッキーとか、奇跡とかじゃない
あなた「ちゃんと狙って打ったからこその結果だと思いますよ!ですよね!」
嶋田「あぁ!同じネットインでも、和久南戦と今とでは、全然違うよ」
傍から見れば、狙ったとか、たまたまだとか、見た目じゃわからないし、ネットインなのは変わらない
けど、確かに山口くんは変わった
嶋田「和久南戦のとき、忠が考えていたのは、おそらく、サーブが入るか入らないか…」
それは、サーブが入る自信がなく、それまでのレベルだったということ
でも今は…
嶋田「今、考えているのは、どこに決めるか。今のは攻めにいった結果のネットインだ!」
それは自信がある証拠で、入る入らないの段階を超えて、狙える段階にいるってことだ
ピッ
岩泉「オーライ」
及川「ナイスレシーブ!」
月島「ワンタッチ!」
山口「ナイスワンチ!」
影山「東峰さん!」
田中「ナイス影山!」
澤村「ブロック3枚!!!」
高い
バンッッッ
日向「うしろー!!」
田中「アー、……ウト!!!」
ピッ
烏野「よっしゃぁぁぁ!!」
あなた「ナイスジャッチ!!」
「おい!?まじかよ!?」
「これって、烏野のマッチポイントだぞ」
谷地「あと一点……」
冴子「あと一点で勝てる……」
滝ノ上「決めろー!決めてくれー!」
嶋田「忠……!」
あなた「山口くん頑張れ…!」
ピッ
あなた「!!いい!!」
変化が強い!
あなた「……あ」
渡「俺がとぉぉる!!」
拾われた…
やっぱリベロすごい…!
バンッッッ
ピッ
ピーーーッ
バンッッッ
烏野「しゃぁぁぁ!!」
嶋田「もう1回来た!!」
滝ノ上「マッチポイント!!」
あなた「頑張れ…」
バンッッッ
25-25
バンッッッ
ピッ
ピッ
あなた「旭さんナイッサー!」
花巻「長い!頼む!」
あなた「!」
ワンハンドトス……!
バンッッッ
ピッ
滝ノ上「さすがだな青城……」
やっぱ一筋縄にはいけないな…
嶋田「次の1本でかいぞー!!でも…」
あなた「…まじか、」
ここで大王様のサーブ…
ピッ
青葉城西「しゃぁぁぁ!!」
27-26
西谷先輩でもとれないなんて…
西谷「くそがぁぁ!!」
あんな西谷先輩が悔しそうにしてるところ初めて見た…
烏野「さぁ!こーーい!!!」
青葉城西「ナイッサー!!」
バンッッッ!!
あなた「田中先輩ナイスレシーブ!!」
澤村「旭!」
西谷「旭さん!!」
バンッッッ
青葉城西「ナイスレシーブ!!」
あなた「!」
16番走り出してきた…!!
バンッッッ
ピッ
青葉城西「しゃぁぁぁ!!!」
16番かと思いきや、岩泉さんにトスが上がった
28-26
「おぉ!!セット取り返した!!」
「烏野ストレートだと思ってたけどな」
滝ノ上「だーー!おいつめたのにー!」
冴子「どんまい!!」
谷地「こっからこっから!!」
嶋田「くそぉ…3セット目しんどいぞ…」
滝ノ上「いよいよだな…」
嶋田「あぁ。青城との決着をつけるセットだ」
あなた「…」
これで決まる
これに勝てば決勝…
負ければこの代で戦えるのも終わり…
ピッ
あなた「旭さんナイッサー!」
バンッッッ
16番があげ、岩泉さんがスパイクを決めた
ピッ
金田一「及川さんナイッサー!」
青葉城西「おーーーれいっ!!」
あなた「旭さんナイスレシーブ!…あっ、でも長い…!」
岩泉「京谷ダイレクト!!」
バンッッッ
ピッ
滝ノ上「やっぱ厄介だなぁ…及川のサーブ」
あなた「ですね…めんどくさいです」
嶋田「頼む…切ってくれ…!!」
谷地「烏野ファイトー!!」
岩泉「及川、もう1本ナイッサー!!」
ピッ
青葉城西「おーーーれいっ!!」
澤村「おっしゃぁぁぁ!!」
あなた「上がった!!ナイスレシーブ!!」
東峰「カバー!!」
バンッッッ
ピッ
ブロックアウト…!
冴子「龍~!よくやった~!」
2-1
ピッ
あなた「ツッキーナイッサー!」
渡「オーライッ!」
及川「京谷ちゃん!!」
バンッッッ
今度は16番のブロックアウト…!
…あれ…?今度…?
バンッッッ
ピッ
7-6
滝ノ上「ファイナルセットも接戦だなぁ…!」
嶋田「でも、まだ1回もリードを奪えてない。離されないよう粘らないとな」
ピッ
あなた「旭さんナイッサー!!」
ピッ
あなた「ナイスコース!!」
旭さんの久しぶりサービスエース
やっぱ強烈…!
ピッ
あなた「もう1本!!」
バンッッッ
拾われた…!
バンッッッ
ピッ
岩泉「及川ナイッサー!!」
青葉城西「おーーれいっ」
バンッッッ
ネットにあたり、弾んだ
澤村「田中!」
田中「おっしゃぁ!」
田中先輩がオーバで拾う
及川「速攻来るよ…!」
渡「ナイスレシーブ!」
岩泉「京谷ラスト!」
田中「ライトライト!!」
バンッッッ
あなた「ドシャット!!」
滝上「今、ツッキーと田中のブロック入れ替わったよな!?」
嶋田「あぁ!ストレート来るってわかってたのか?」
あなた「多分、ツッキーが上手く使ったんですよ」
冴子「どういうこと?」
あなた「田中先輩と16番はお互い強く敵視してるんだと思います。だからさっブロックアウトで張り合ってたし」
ピッ
渡「オーライ!」
花巻「ナイスレシーブ!」
澤村「16番、来るぞ!」
バンッッッ
月島「アウト!」
烏野「よっしゃぁぁぁ!!」
あなた「ナイスジャッチ!!」
8-9
冴子「そのまま行けー!」
澤村「たたみかけるぞぉぉ!!」
烏野「おーっす!!」
ピーーーッ
タイムアウト…!
澤村「月島ー!もう1本ナイッサー!」
あなた「ナイッサー!」
ピッ
渡「オーライ!」
及川「きょうけんちゃん!」
ピッ
烏野「よっしゃぁぁぁ!」
8-10
及川「国見ちゃん!!」
フェイント…!
飛雄が拾い、西谷先輩が田中先輩にトスをあげる
バンッッッ
ピッ
10-12
烏野「よっしゃぁぁぁ!!」
ピーーーッ
冴子「あれ、もうあいつ戻ってきた」
あなた「!」
滝ノ上「戻すのか、早かったな」
16番が戻ってきた
嶋田「青城にとっては、賭けだろうけどな」
ピッ
あなた「田中先輩ナイッサー!」
岩泉「うし!」
渡「ナイスレシーブ!」
及川「きょうけんちゃん!」
京谷「ウォォォォォ!!!!」
バンッッッ!!!
多分、今日一1番いいスパイク…
さっきのは、前の時とは少し違う…
なにか吹っ切れたような…なんというか…
何かあったのか…
ピッ
11-12
岩泉「京谷次サーブ!」
ピッ
西谷「龍!」
田中「しゃぁぁぁ!!」
影山「ナイスレシーブ!」
バンッッッ
バンッッッ
ピッ
12-12
ピッ
西谷「よっしゃぁぁぁ!!!」
バンッッッ
あなた「また拾った!!」
今度拾ったのは岩泉さん
スパイクだけじゃなくて、レシーブも上手い…
田中「チャンスボール!」
澤村「叩け!旭!」
バンッッッ
ピーーーッ
嶋田「しっかし、日向のスパイク、コース絞れたり読まれたりすると、拾われるな」
滝ノ上「あぁ」
確かに…あんま今日日向いつもより決まった打数少ないしな…
ピッ
15-15
冴子「げ、またか…」
嶋田「及川のサーブが回ってくる度、寿命縮んでる気がする…」
谷地「なんか吐きそうです…」
滝ノ上「こっち側はそうだろうな」
及川さんのサーブって一体…
ピッ
西谷「さっこーーい!!」
青葉城西「おーーーーーーれいっっ!!」
西谷「大地さん!」
「ひぃ!!」
「あんなのよく拾うなぁ!」
そうだろうそうだろう
大黒柱舐めんなよ~
渡「チャンスボール!」
澤村「くそ!!速攻来るぞ!!」
バンッッッ
金田一にトスが上がった
あなた「!!」
高い…!
金田一ってあんな高かったけ…?
15-16
ピッ
金田一「及川さん、もう一本ナイッサー!!」
青葉城西「おーーーーーれいっ!!」
西谷「すまん!!月島頼む!!」
岩泉「押し込め金田一!!」
ピッ
あなた「ツッキーナイス!!」
ツッキーの押し合いとかあんま見ない無いから嬉しいな
日向「俺がいればお前は最強だ!!」
あなた「……!」
“俺がいれば”……か
その一言が、胸に引っかかる。
視線の先で、影山がほんの一瞬だけ目を見開いた。
あなた「(あの飛雄が…)」
中学の頃の姿が、頭をよぎる。
淡々とプレーして、
ほとんどのことを自分でやって。
周りに合わせることも、頼ることもなくて――
…一人で、バレーしてた
“王様”って呼ばれてたあの頃。
誰もついてこれなくて、
誰にも合わせなかった。
全部、自分でやるのが当たり前だったんだと思う
でも――
今 は違う
「俺がいれば最強」
そんな言葉を、誰かに向けられて。
胸の奥が、じんわり熱くなる。
あなた「(変わったんだ……)
一人で強かったセッターが、 誰かと一緒に“最強”になろうとしてる。
視線の先で、日向が真っ直ぐに笑っている。
あんなふうに言える人が隣にいる
これが、今の飛雄なんだ













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!