ここは、魔法があり
人類の敵「魔族」のいる世界。
人間は魔族より下。
玩具のようにもてあそばれ、大量に喰われる。
人類はその時、
まるで地獄絵図のような光景を見た。
そこで、人は
魔族の手が及ばぬ“海”へ避難し、
海中都市「アーキュリオル」を作った。
1000年間もの間、海に守られてきた人類は
そんな事態をも忘れ歴史の教科書に乗せるぐらい
アーキュリオルの中で平和ボケしてしまっていた……。
◇
ピィッーピィッー
……んー。
やっぱり苦手だな、この音。
そんなことを思いながら
私海鳴夏穂はゆっくりと体を起こす。
なんだかんだで準備を終えたので
いつも通り学校へ向かう。
綺麗な長髪を長引かせながら振り向いた
私の親友の糸宮咲。
咲とは幼馴染で本当に仲良しなんだ!
後ろからコツンと軽く小突かれて
振り返ればしかめっ面の早崎光汰。
こいつとも腐れ縁で昔から一緒だ。
当たり前のように抱きつかれて
振り返る気力もないけどこれは確かに
錐妖怜央だ。
私たちは幼馴染で
なんだかんだ仲良くしている。
この二人は怒るとヤバイ。
そして大体怜央が怒らせる。
そして私が止めに入ることになる。
先生に歯向かう癖がある怜央や
お喋り好きな私、
生意気な態度を改めない光汰に
とにかく目につく咲、
やばい面子で周りからは
問題児組と言われているけど
私はこの四人で話す時間が大好きなんだ!
まだこんな会話して
先生をどうからかうか話してるうちは
知らなかったんだよ。
こんな平和は薄く脆い糸の上になって
いたなんて。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!