曇り空の下、病院の前で私は足を止めた。
胸の奥が、少しだけ重い。
それでも、息を整えていつも通りの笑顔をつくった。
自動ドアが開き、冷たい空気が頬に触れた。
受付を済ませ、待合室へ入った。
待合室は静かで、時計の秒針の
音だけがやけに大きく聞こえた。
しばらくすると、
自分の名前が呼ばれ、私は少しだけ背筋を伸ばす。
指定された診察室の扉を開けると、
三十代後半くらいの男性医師が顔を上げた。
柔らかい表情で、少しだけ
フレンドリーな雰囲気の人だ。
自分で言っておいて、少しだけ胸が痛んだ。
“元気”って言葉、最近はお守りみたいに使ってる。
お医者さんは、そう言って机の上の書類を探し始める。
一枚、また一枚と紙をめくる音が、
なぜか落ち着かなかった。
少しだけ探して、ようやく目的の紙を見つける。
椅子に座り直し、視線を検査結果に落とした瞬間───
先生の表情が、ほんの一瞬だけ変わった。
笑顔でもなく、困った顔でもない。
ただ、空気が静かに張りつめたような、そんな顔。
胸の奥が、理由もなくざわついた。
その声は、さっきまでより少し
低くて、少しだけ慎重だった。
私は小さく息を吸い、無意識に膝の上で手を握る。
先生は一度だけ視線を紙から外し、
私を見てから、ゆっくりと言った。
一瞬、何を言われたのか分からなかった。
ただ一つだけ確かだった。
私の"普通"は、もう戻らない。
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修正 : 2026/3/21 , 13:30












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。