南雲side
ふと神々廻にそう言われて
自分が自分じゃないような気がした
君に、こんなに振り回されているなんて。
帰り道、冷たい夜の空気は平等に道行く人へ吹きつける
静かな冷たさが、孤独をさらに確固たるものとしていて
いっその事
このまま空気に溶け込んでしまいたい。
そして、こっそり君のことを眺めることが出来たなら
僕はどれほど幸せになれるだろうか。
あなたside
仕事が酷く億劫だった。
資産家の嫡子
政治家の愛人
静かに隠れて暮らした親子.....
ひたすら任務をこなし、残るのは
吐きそうな血の匂いだけで。
血の匂いを被る度、私は何者なのか思い知る。
幸せになる資格などきっとない。
苦しみから逃れる術はない。
ただひたすら
願い続けるだけ。
世間一般的に“元彼”と呼ばれる関係となってしまった
彼の
この上ない幸せを。
今日の任務、殺連から逃げた親子を殺した時、
母親が言った言葉。
“愛している”
短い言葉に込められた想いは計り知れない。
けれどその言葉を聞いた時、
やはり無意識に思い出されてしまうのは彼の顔で。
まるでそれは呪いのように鮮明で。
好きだと思ったことなんてない。
好きだと思ったことなんてない。
ない。
なかったことにした、筈だったのに.....
君の顔が見たい。
君の声が聴きたい。
君の全て。
今だって嫌いになんかなれない。
酷く滑稽だ。
突き放したのは私の方なのに。
君は今他の人の手を握っているのだろうか。
他の人の腕の中だろうか。
私のものだった、なんて言えない
今までの日々の積み重ねが
私に今更君のことを思う資格なんてないと語っている。
…あの母親。
素敵だった。
自信を持って、愛していると言えるなんて。
自分より、遥かに大事なのだろう。
あの少女の存在が。
思うよりも前に零れた声が私の本音を明らかにする。
そして、明らかとなった本音も
冬の暗い冷たい空気に溶けてすぐ見えなくなった。
私を含め、誰もそれを拾い上げたりなんかしない。
例え、まだ未練が有ろうとも、
この先忘れられなくとも。
赤く染まった汚い手で食べ物を胃に入れ、
冷たい部屋で眠れぬ夜を明かし、
この後悔と懺悔の中で私は濁った息をするんだ。
そう考えてしまうと、ふとため息がこぼれた。
誰にも気づかれないよう、ひっそりと。
スポラありがとうございます︎🫶🏻












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!