緑谷 side
冷たい声に、一瞬僕たちの動きが止まった。
血まみれの人はその隙を逃さず、
耳郎さんの首元に手を伸ばした。
服の襟を少し引き下げ、傷口を確かめる。
手当がとても手馴れていた。
まるで、“ いつも、誰かにしているかのように ”
耳郎さんの体がびくりと震える。
血まみれの人は自分の着物の袖からハンカチを出し
そのまま首元に押し当てて圧迫していた。
白い布が瞬く間に赤く染まるが、
しっかりと血を抑え込む。
耳郎さんの視線が揺れる。
頬は赤く染まり、痛みよりも、
目の前の少年の落ち着きに目を奪われていた。
僕たちはただただその光景を見てることしかできなかった。
敵か味方かわからない人が、目の前で、
仲間の手当をしている。___ 守ろうとしてる。
その矛盾に頭が追いつかない。
轟くんが低く呟く。
かっちゃんはまだ、警戒を解いてない様子だった。
僕もまだ、信じきれない、
相手が襲いかかっても対応できるように
構えておく。
血まみれの人は僕たちに背を向けたまま、
布をきつく巻き付け、しっかりと固定させていた
やがて血が滲むのが収まり、
耳郎さんの呼吸が少しずつ落ち着いてくる。
手当が終わったのか、急に立ち上がる。
くるりと僕たちの方に向き直る。
そう告げ、そっと耳郎さんの元から
少しずつ離れていく。
何処かに向かおうとする、血まみれの人を
僕は気がついたら、引き止めていた。
こちらをチラリと見てくる。
その時初めて、その少年と目があった。
何も写さない虚ろな瞳。
何を考えているのかが、全くわからない
そんな瞳に、僕は見とれていた____。













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!