第50話

-46- 誘導
833
2025/12/26 05:24 更新
 練馬区・住宅地外れ。
 人気のない路地が、戦場から少しだけ離れた場所。

 崩れた塀の影。
 そこに――あなたの名字は、一人で立っていた。
あなた
…はぁ
 通信機は、切っている。
 仲間の気配も、ない。
あなた
ほんとに“ひとり”だと、思わせないとね
 指先を、軽く噛む。

 にじんだ血が、ぽたりと地面に落ちる。

 

 ――紅空律界、展開。

 

 血は広げない。
 あくまで、“最低限”。
あなた
(見せる情報は、少なく)
(でも、“餌”としては十分)
桃太郎隊員A:
「……いたぞ」

 

 路地の入口に、影が三つ。

 

桃太郎隊員B:
「一人だな」

 

桃太郎隊員C:
「援護なし。
 ……本当に、孤立してる?」

 

あなたの名字は、わざと振り返る。
あなた
 一瞬だけ、目を見開く。

 演技として、完璧な“驚き”。
あなた
もう、来たんだ
桃太郎A:
「やっぱりだ」

 

桃太郎B:
「あなた。
 単独行動は悪手だぞ」
あなた
…そう?
 あなたの名字は、逃げない。
 でも、前にも出ない。
あなた
隊長、いないんでしょ
 桃太郎たちが、微かに反応する。
あなた
真澄隊長、落とせた?
 沈黙。

 

桃太郎C:
「……」
あなた
その顔、まだだね
桃太郎A:
「関係ない」

 

 剣先が、向けられる。

 

桃太郎A:
「お前を落とせば、十分だ」
あなた
…そっか
 あなたの名字は、少しだけ肩を落とす。
あなた
じゃあ
あなた
私に集中して
 次の瞬間。

 あなたの名字が、後ろに跳ぶ。

 

 ――血が、**“あるはずのない位置”**に弾ける。

 

桃太郎B:
「っ!?」

 

 足元。

 踏み込んだ地面が、わずかに歪む。

 

桃太郎C:
「罠――!?」
あなた
罠じゃないよ
 あなたの名字は、路地の中央に立つ。
あなた
誘導ゆうどう
 血が、点と点を結ぶ。

 床ではない。
 壁でもない。

 

 “動線”そのもの。
あなた
孤立してるって
あなた
思ったでしょ
桃太郎A:
「……っ!」
あなた
それでいい
 あなたの名字は、静かに目を細める。
あなた
だって今ーー
 血が、空間に沈む。
あなた
全員、私の庭に入ったから
 ――神庭、発動。

 

 音が、消える。

 

桃太郎B:
「な、にが……!」

 

 動こうとした瞬間。

 “動こうとした”という兆しが、空間に読まれる。

 

 足が止まる。
 息が詰まる。

 

桃太郎C:
「身体が……!」
あなた
考えなくていいよ
あなた
もう、終わるから
 血の線が、ふっと消える。

 

 次の瞬間――
 桃太郎三名、地面に崩れ落ちる。

 生きているが、完全に行動不能。

 

あなたの名字は、ゆっくり息を吐く。
あなた
…うん
 通信機のスイッチを、入れる。
あなた
真澄隊長
すぐ返事
淀川真澄
終わったか
あなた
うん。
 “孤立”は成功
淀川真澄
予定通りだ
あなた
…ね
 あなたの名字は、倒れた桃太郎たちを一瞥する。
あなた
次は、もっと大きいの来るよ
淀川真澄
分かってる
少しだけ、間
淀川真澄
無事で何よりだ
あなた
…それ、珍しい
淀川真澄
事実だ
通信が切れる。

 

あなたの名字は、血を拭って歩き出す。
あなた
“孤立したあなたの名字”を見たら
あなた
全員、寄ってくる
小さく笑う
あなた
――一番、やりやすいんだよね
 遠くで、別の戦闘音。

 罠は、まだ続いている。

プリ小説オーディオドラマ