放課後、夏目は今日あったことがどうしても気がかりで、友人達との会話にもどこか上の空だった。
そして、帰宅後真っ先に一人の友人の元へ向かった。
「なぁ、ニャンコ先生」
「なんだ夏目」
夏目の目の前の猫が答える。
そして、夏目は今日あったことを全て話した。
「ふむ…」
ニャンコ先生は少し考えるような素振りを見せると、
「偶然だろう。妖物が見える人間なんてそうそうおらんだろうしな」
「そうか…」
「まぁ、でも、もしかしたら祓い屋かもしれん」
「小娘がそんな妖力を持っているわけがないが、気をつけるんだぞ夏目」
いつも通り、呑気な口調で答えた。
まったく、こっちは気にしているっていうのに…
確かに彼女が祓い屋だった場合、友人帳を持っている事がバレたら大事だ。
次の日、夏目はいつも通り通学路を歩いていた。
しかし、あの不思議な転校生への疑問は増すばかりであった。
「博麗は、本当に祓い屋なのか……?」
「わからないことが多すぎる……」
「貴様、友人帳の夏目だな?」
背後から声がした。
妖だ…
直感でそう確信した。
辺りを見回すがちょうど木々で周りが死角になっており、逃げ出すことも困難であり、助けを呼ぶことすらできない。
何者かが近づく音はだんだん近づいてくる。
退路を塞がれないよう、唯一逃げられそうな道を咄嗟に確保した。
しかし、それも近づいてくるものの前ではあまりにも杜撰で無謀な悪あがきでしかなかった。
突然の突風が吹き、夏目は慌てて地面に伏せた。
「チッ…勘のいい餓鬼め」
早すぎてよく見えなかったが、相手は刃物を持っていた。
「刃物を使うなんて…こっちは無防備の人間だぞ!」
何とか躱す事ができたがあの刃物が夏目の体に触れるのは時間の問題だ。
「ハッ!笑わせる」
「我が同胞は何匹も貴様ら人間に殺されておるのだぞ!」
先ほどよりも妖の動きが速くなった。
辺りの木々を切り裂いて夏目の居場所を探っているようだった。
「貴様を殺してから友人帳をいただくとしよう!」
(不味いな…このままでは……)
「人間相手に何やってんのよ!!!」
あの凛とした声が聞こえたと思った瞬間、あの妖が出していた刃物の音がぴたりと止む。
目を開けると、夏目と同じ世分高校の制服を着た少女が妖をお祓い棒と思われるもので殴っていた。
上から叩きつけるように。
軽やかに地面に着地し、こちらに向き直る
「君、怪我はなかっ…」
あまりの出来事に尻もちをついている夏目と目があい霊夢が思わず凝視したかと思うと、
「って、あ、あんたは、えーっと…」
「あ、思い出した、夏目!?……君?」
「なぁ…今の……」
疑問が確信に変わった。
妖を見る事ができ、たった今夏目を窮地から救い出したのは、件の転校生、博麗霊夢だ。
「えっと、あー、これは違うから!」
そういって彼女は走り去ってしまった。
「あ、おい!!」
そう叫んだ夏目の声は届かず、どこかに消えてしまった。
(ということは、彼女は祓い屋なのか…?)
追いかけようと一歩踏み出すと
「ギャァ!」
甲高い声が足元から聞こえ、何やら柔らかいものを踏んだような感触がする。
慌てて後退りすると、地面に居たのは両腕から鎌が生えている伸びたイタチ。
昔、本で見た事がある。
「鎌イタチだったのか…」
その日、博麗は学校を休んだ。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。