秋の冷たい空気を吸うと、なぜか寂しい気持ちになる。
それは、春や夏を共に過ごした木々の木の葉たちとの別れを彷彿させるからだと思う。
しかし、その運命を受け入れるかのように、彼らは散り際までも美しく凛としている。
自分の養分を糧にして次の世代が美しい花を咲かす手助けをする。
こんなにも美しく儚い一生を体現している季節だとつくづく思うのだ。
「紅葉もすっかり見頃だな」
そう呟くのは、美女と見間違える程の青年だ。
名は夏目貴志。
「おい夏目、今日転校生が来るらしいぜ」
そう話しかけてきたのは、夏目のクラスメイトであり友人の西村だ。
「お前、そんな情報どこで知ったんだよ」
夏目は呆れた様子で返事をする。
「職員室の前で、すっげぇ可愛い子がうちの担任と話してたのを見たんだよ!」
と、興奮混じりに話した。どうやら嘘はついていないようだ。
「そもそも、たまたまうちの担任と話していただけで、このクラスに来るとは限らないだろ?」
「第一、本当に転校生かもわからないじゃないか」
「う、確かに……」
「はぁ、期待してたのになぁ…」
ガックリ肩を落とす西村の後ろ姿を見ながら、夏目にはどこか心に引っ掛かるものがあった。
始業のチャイムが鳴る。
足音が聞こえる。
恐らく担任だろう。
しかしその音はいつもより多かった。
「えー、転校生を紹介します」
教室がざわついた。
無理もない、担任と一緒に入ってきた少女、つまり久しぶりの転校生、なのだから
「博麗霊夢です。よろしくおねがいします」
凛としたその立ち姿には、蝶のような美しさと、どこか近寄りがたい無慈悲さを持っている気がした。
彼女は、先生に指示され、予め用意してあったと思われる、廊下側の1番奥の席に向かった。
だが、彼女は歩いている途中で不可解な発言をしたのだ。
「あの、これ外に出さなくていいの?」
窓枠のちょうど段差になっている部分を指差す。
あれだけ騒いでいた教室が一瞬にして静まり返った。
何故なら、彼女が指を差した方向には何もいなかったからである。
教室が困惑しているのがわかる。
もちろん夏目も動揺している。
しかし、それは彼女が不可解な発言をしたからではない。
指を刺した先には妖がいたからである。
低級で見た目も小さい奴だが、彼女の指は明らかにそいつを差していた。
「あ、先生、そこに虫がいます」
静まり返った教室に一人のクラスメイトの声が響いた。
よく見てみると確かに虫が迷い込んでいるようだ
指が差している方向とはずれているが…
「あ、ほんとだ」
「えーっ!?ちょっと早く追い出してよ!」
「博麗さん、よく気づいたね〜」
虫に気付いたのか次々と声が上がった。
当の本人は納得していないような顔つきだが、席についたため事態は落ち着いた。
しかし、俺はずっと、彼女が妖を指差していたことについて考えていた。
あれはなんだったのか、彼女には妖が見えているのか、考えても仕方ないことだが、一日中そのことについてずっと考えていた。
もし、彼女も妖怪が見えるのだとしたら…‥












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。